白樺 猛打爆発 17安打で旭実に13-4
【旭川】白樺学園が猛打で3度目の優勝を決めた。最終日は24日、旭川スタルヒン球場で決勝を行い、白樺学園が4番加藤隆舗(3年)の逆転2ラン本塁打など17安打を集中し、旭川実(旭川)に13-4で快勝、昨年の事故でチームメートを亡くした悲しみを乗り越え「高校野球100年」の節目の年に4年ぶりの甲子園出場を決めた。十勝支部勢の代表は2013年の帯大谷以来、2年ぶり15度目。白樺学園は8月6日から阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれる全国選手権に出場する。(岡部彰広、北雅貴、高津祐也、塩原真、金野和彦)
守備からリズム 一気逆転
119キロのスライダーがピンポン球のように旭川の空に向かってはじき返され左翼席に突き刺さった。
五回、主砲加藤隆舗(3年)の公式戦3本目となる起死回生の逆転2点本塁打。ダイヤモンドを一周する姿にベンチが沸き、重苦しい雰囲気が一掃された。「これまで打てなくて悩んでいたが、この大会で4番としての大きな仕事をしてくれた」。戸出直樹監督の声のトーンが一段高くなるほどの一撃だった。加藤も「前の打席で打ち取られた球がまた来ると思って狙っていた」と会心の一発に胸を張った。
「守備からリズムをつくって攻撃へ」。周東拓弥主将(同)らが言い続けてきた理想を実現、大事な場面で守り切ったことがビッグイニングにつながった。
四回裏、河村説人(同)が打ち取ったはずの当たりが不規則なバウンドで二塁打となり1-3。相手ペースになりかけた時だった。旭川実・亀田龍斗(1年)の中前に抜けようとする速い打球を、配球から飛ぶ位置を予測していた二塁手の後藤博希(2年)が横っ飛びで好捕、素早い送球でアウトにした。抜けていれば3点差となり、試合の流れが大きく傾く場面だった。続く打者を河村が140キロの速球と鋭いカーブで空振り三振に仕留めた。
戸出監督は「3点はしょうがない。でも4点目を取られるのは厳しいぞと思っていた。後藤のプレーはこの試合一番のポイント。いい反応だった。加藤も打てなくて悩んでいたが、反応でパンと体が動いた一打だった」と理想的な攻守にうなずいた。旭川実の坂口新監督も「ビッグイニングをつくられないようにと思っていたが、(五回の)4点はきつかった」と勝敗の分け目に挙げた。
夏の道内公式戦100勝目とともにもたらされた3度目の甲子園出場は、2枚のエースを中心に守備を強化してきた成果だ。伝統の強打も健在。支部からのフル出場選手6人のうち、後藤、池田裕介(3年)の5割ちょうどを筆頭に4割以上が4人、3割5分6厘と高いチーム打率も残した。
「甲子園で戦う力はあると思う。一つひとつ勝っていきたい」。これまでの2回とはひと味違うチームを率いる戸出監督の言葉に、力がこもった。
エースが真骨頂「甲子園2人で」 河村
歓喜の輪の中心で、192センチの大きな体を小躍りさせた。4失点はしたが球数はわずか108。河村説人の真骨頂である打たせる投球を最後まで貫いた。
準々決勝の稚内大谷戦で2枚エースが共に精彩を欠き、大苦戦した。それでも準決勝・北見工戦で中野祐一郎が立ち直り1失点完投。その時点で戸出監督は決勝の先発登板を河村に決めた。「1番を背負っているのだから投げてほしいと思った」
復活の期待に応える出だしだった。130キロ後半の角度のある速球を低めに決め、一、二回は凡打の山を築き三者凡退に抑えた。中盤に連打を浴びて失点したが「ミスがなければもっといいピッチングができていた」と同監督は最後までマウンドを託した。
大量援護、そして「後に中野がいる」という安心感に支えられマウンドで優勝の喜びを味わった河村。「本当うれしい。夢の甲子園は2人で投げていくぞという気持ちでいる」と、再び中野と協力しながらチームへの貢献を目指す。
五回に集中打
白樺学園は初回2死三塁、三回2死一、三塁の先制機を逸したが、1点を追う四回に橋本の左前打、川村の四球で2死一、二塁から河村の適時左前打で同点に追いついた。
再び追う展開となった五回は打者三巡目。ここで球筋にも慣れ、連投で制球が甘くなった相手投手を捉えた。川波がこの試合3安打目を右前に運び、後藤の犠打で1死二塁から池田が適時中前打。続く加藤の左翼席への2点本塁打で逆転すると、さらに2死から河瀬、川村の連続二塁打で1点を加え5-3とリードを奪った。六回以降も敵失や暴投を絡めて毎回得点。最終回には四球などで1死満塁から後藤の走者一掃右中間二塁打や暴投などで4点を加えた。
エース河村は速球と変化球を交えて好投、中盤に連打を浴びたが大量援護と堅守に支えられ、終盤には尻上がりに調子を上げて完投した。
4連続安打で勢い 1番・川波
1番川波俊也(3年)が初回から4連続安打の固め打ち。3度にわたって生還し、チームの大きな活力となった。
三回の守りで、一走へのけん制を悪送球し先制を許した。「ファースト(川村)から投げなくていいと指示され腕を止めようとしたが、(球が)指から抜けていった」。
この悔しさは打で返すしかなかった。五回、内角低めの難しい変化球を右前にクリーンヒット。逆転のきっかけをつくった。「点を入れられた直後は試合が動く。(先頭打者の)自分がチームに勢いをもたらせると思っていた」
中学時代は室蘭リトルシニアで全国大会出場経験を持つ。昨年はけがをした正捕手に代わって北大会に出場したが、大量失点のきっかけとなる打撃妨害をするなど、活躍できないまま途中交代した。「甲子園に行けるのは白樺と思って練習してきたが、昨年の悔しさを晴らせたし、最高の形で(北大会を)終われた。甲子園は集大成としたい」。
◆ナイン 喜びの声◆
浮かれずに/(1)河村説人(3年)
4失点をしたが完投でき、夢の甲子園に行けてうれしい。浮かれずしっかり頑張りたい。
単打でつなげた/(2)川波俊也(3年)
単打でつなぐ野球ができた。甲子園ではリード面と打撃でチームに勢いをもたらしたい。
バット短く/(3)川村涼輔(3年)
不調だったが、バットを指3本分短く持つことで打てた。甲子園では何でもいいからヒットになればいい。
役目果たしたい/(4)後藤博希(2年)
バントが多かったがつなぐ野球ができた。甲子園でもつなぐという自分の役目を果たしたい。
1点差が経験に/(5)橋本球道(2年)
1点差試合がいい経験となった。甲子園は中学の全国とは舞台の大きさが違う。積極的なプレーをしたい。
声出して貢献/(6)矢尾板大河(2年)
プレーできなくて悔しかったが、声を出して貢献できた。甲子園では(グラウンドに)立てるよう頑張る。
乗り越えられた/(7)河瀬寛三(3年)
焦りはなかった。(号泣は)洸稀が亡くなるなどつらかったことを乗り越えたのを思い出した。
夢の舞台楽しむ/(8)池田裕介(3年)
次につなごう-とチームのために仕事も成長もできた大会だった。夢の舞台を楽しみたい。
甲子園もつなぐ/(9)加藤隆舗(3年)
4番だが、自分のスタイルである「つなぐ意識」を変えることなく甲子園で戦いたい。
甲子園はゼロに/(10)中野祐一郎(3年)
いつでも(投手としてマウンドに)行く準備はしていた。甲子園では全力投球でゼロに抑える。
一言声を掛けた/(11)和田涼平(3年)
バットボーイだったので、打席に入る選手にそれぞれ一言掛けた。きょうは思い切り振ってこいと励ました。
チームに活力を/(12)広井強太(2年)
これで3年生とまだ野球ができる。ベンチからの声出しで、チームに活力を与えようと思った。
頼もしかった/(13)岡田拓己(2年)
3年生は決勝も堂々としていて頼もしかった。全国では出場機会があれば、はつらつとしたプレーをしたい。
洸稀のために/(14)周東拓弥主将(3年)
安心して見ていられた。洸稀のためにこのメンバーで甲子園に行くしかないと思っていたのでうれしい。
楽しかった/(15)金子蓮(3年)
最後の夏に甲子園に行けてうれしい。一塁コーチャーとして走塁や相手投手の癖などを指示した。楽しかった。
反省生かせた/(16)佐々木将太(3年)
三塁コーチャーとして良い判断ができた。稚内大谷戦で投手に無理な走塁をさせた反省を生かした。
優勝、最高の瞬間/(17)金田利貴(3年)
優勝はイメージ通りの最高の瞬間だった。ブルペン捕手として、投手の気持ちを乗せることを心掛けた。
守備から流れ/(18)松浦昌輝(2年)
甲子園出場が一番の夢だった。自分は守備の人。守備から攻撃へつなげる流れをつくる役割は果たせた。
◆3年生ひとこと◆
選手に「大好き」と/早川凌斗君(3年)
4年前にテレビで見た甲子園出場に憧れて入学した。念願だった。選手に「大好き」と声を掛けたい。
どんどん勝つ/内海達貴君(3年)
最高に感動した。ナインには絶対甲子園に行ってもらいたかった。この勢いでどんどん勝ち進みたい。
長い夏が始まる/佐藤翔君(3年)
まさに夢のよう。これから長い夏が始まる。甲子園に向けて、自分も技術を高められるよう頑張っていきたい。
球児の励みに/水落李空君(3年)
ありがとうの一言。白樺の強さは個人の意識の高さ。甲子園を目指す球児の励みになるよう自分も努力したい。
ベンチ入りを/両角祐助君(3年)
加藤の2ランの瞬間が心に残っている。メンバーの入れ替えがあるので、ベンチに入れるよう努力したい。
夢の舞台に興奮/中村拓也君(3年)
エースの説人(河村選手)の好守備から攻撃のリズムができた。夢の舞台に立てるという興奮が収まらない。
強い気持ちで/中島幸哉君(3年)
意地でも勝ってほしいという思いだった。自分は気持ちの強さは誰にも負けない。アピールしていきたい。
声かれるほど/横田勇人君(3年)
結果につながり本当に良かった。試合中は持ち前の声の大きさで声がかれるくらい叫んだ。
練習量が実力に/名畑いるか君(3年)
個人の力以上に、日々の練習量が白樺の実力だと思う。自分も負けじとベンチ入りできるよう練習したい。
全力で貢献する/小澤翔君(3年)
試合後に集まり、泣いたり笑ったりするナインを見て長い道のりを感じた。全力でチームに貢献したい。
選手にお疲れと/大場悠平君(3年)
「お疲れ」と選手に声を掛けたい。甲子園では自信を持って楽しくプレーすることが結果につながると思う。
13得点は史上2位
<最多得点記録>
北北海道大会の1試合最多得点は第72回大会(1990年)の1回戦で帯南商が挙げた20(20-0名寄)。決勝では第52回大会(1970年)の北見柏陽の15(15-1名寄)。今大会決勝の白樺学園の13得点および9点差は決勝で史上2番目。
◆夏の甲子園 北北海道大会について
・第97回 夏の甲子園 北北海道大会-十勝毎日新聞電子版