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高次脳機能障害の野村さん高齢者デイサービスで活躍

利用者の渡邊さんと会話する野村さん(右)。真剣に話を聞き出すうちに2人とも笑顔になっていく

 高次脳機能障害で右半身がまひしている帯広の野村隆敏さん(46)が、市内の社会参加型デイサービス「さくら」(西16南5)を利用する高齢者の話し相手やリハビリの助手として活躍している。重い障害を持ちながら諦めずにリハビリを重ね、失語症も克服してきた野村さんは、高齢者のつらさを深く思いやり、笑顔で対話する。聞き上手で自然な対応で元気をくれる野村さんは、高齢者たちの間で「のむさま」とも呼ばれる人気アイドルだ。

 野村さんは足寄町出身。旧足寄東小、足寄中、本別高校を卒業後、大阪の調理師専門学校に進み、調理師として本州で就職。故郷に戻り、父の板金業を継いで働いていた31歳のときに、自宅で脳動脈瘤破裂で倒れた。帯広の北斗病院で手術を受けて一命を取り留めたが、右半身まひなどの重い障害が残り、言葉も出なくなった。

 それでも野村さんは「できるようになるはず」とリハビリに励み、車いす生活から歩けるようになった。帯広の株式会社「花」の久保陽一社長の誘いで、同社が運営する多機能型就労支援施設TEnoHIRA(てのひら)で3年前から活動を始め、昨年7月から施設外就労として、同社が運営する「さくら」で働き始めた。

 「さくら」では週に4日間、午前10時半から午後3時まで働く。60代から90代までの高齢者約150人が利用する施設で、野村さんは一人でいる高齢者を見つけては話を聞く。自分と同じような脳内出血で障害を持ち、落ち込んでいたり、焦っていたりする人には「それでもできることはある」「順繰り順繰りやればいい」と優しく励ます。

 野村さんの真面目な働きぶりは、利用者の間で評判だ。渡邊コマツさん(92)は「札幌に住む66歳の娘が病気で同じような障害を持った。野村さんを見て、娘を励ますことができた」と言う。ほかの利用者も男女を問わず「いい男だ」「二枚目で努力家」「働きぶりが立派」と野村さんにほれ込み、大勢のファンがいる。

 野村さんは、今でも「言いたいことの2割も出ない」というつらさを抱えるが、それでも真剣に相手に向き合う。「こういう(自分の)体だからこそ、同じような体の方々のステップアップのために、共に歩んでいきたい。(高次脳機能障害があっても、さまざまな仕事が)できるんだということも広めていきたい」と、人の心の奥に届く言葉を懸命に探りながら笑顔で働き続ける。(横田光俊)

関連写真

  • 野村さん(左から2人目)とファンの利用者。右から大谷清治さん、唯野夕美子さん、左端は石原ヨシ子さん

    野村さん(左から2人目)とファンの利用者。右から大谷清治さん、唯野夕美子さん、左端は石原ヨシ子さん

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