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動物園のあるまちプロジェクト

第2回

冨川創平さん

飼育展示係/ゾウ、トラ

ナナの言葉を聞く



 ゾウは感情豊かで頭のよい動物です。外にいるとき、寒くて獣舎に入りたくなると鼻でドンドンと扉をたたきます。機嫌がいいときは耳をパタパタさせて職員に近づいてきますが、機嫌が悪いと前足でユサユサと貧乏ゆすりのような仕草をすることがあります。

 日によって時間によって、ゾウのナナはさまざまな喜怒哀楽を見せます。動物の健康を保つためには、掃除やえさやりといった身の回りの世話も重要なのですが、声無きゾウの言葉によく耳を傾けること(観察すること)が最も大切ではないかと考えています。

 ナナはいつも決まった場所にウンチをしますが、いつもとは違う場所にウンチをすることがあります。分かりやすい例では、プール内や寝わら(ゾウのベッド)の上です。これは、「水が汚れたからプールを掃除してね」や「寝わらが汚れたから新しいものに交換してね」というナナからのメッセージであることがあります(そうでないこともあります)。「暇だからこっち来て話を聞いて」や「あなたじゃ不安なの」など、ウンチの場所一つでも、「いつもとの違い」の中にナナの意思が隠されていることがあります。

「今日の気分はどうかな」。言葉を聞いてナナが心地よい空間を作りたいと思います

 長い時間をかけて「いつもとの違い」が連なって、ナナのメッセージが浮かびあがることもあります。あの時はこんな事を言いたかったのかな…と分かったこともありました。ナナの意思が通じる職員がナナにとって「いい人」なのだろうと思いますが、現実的にナナの言葉を完全に理解するのは難しいものです。

 ナナは57歳で、アジアゾウでは国内2番目の高齢なゾウです。1日でも気持ち良く長生きしてもらえるように、耳を傾けていきたいと思います。

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