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動物園のあるまちプロジェクト

特別編
「未来の動物園を考えるフォーラム in おびひろ」

 これからのおびひろ動物園(柚原和敏園長)を話し合う「未来の動物園を考えるフォーラム~語ろう帯広ならではの動物園の夢~」(市教委主催)が15日、帯広市内のとかちプラザで開かれ、大阪芸術大学教授で動物園デザイナーの若生謙二氏が講演した。若生氏の講演「世界の動物園からみた、おびひろ動物園の可能性」の要旨を紹介する。



 現在の動物園の役割は、生物多様性への理解を育む、あるいは動物種とその生息環境を認識する場。そして保護のメッセージを伝える場でもある。メッセージを伝えるには、展示にもそうした環境を作り出すことが大切だ。

 動物展示の課題は、その動物が野生で生息している環境の再現を図り、本来の行動や習性を発揮させることだ。また、動物は野生状態での観察に近い見上げる視線、または来園者の視線の高さに近い位置に動物を置くことが求められ、見下げる状態に置くべきではない。

 これまで動物園のデザインを手がける中で、動物園が“地域を展示する場所”にできるのではないかと考えた。ニホンザルも本州、九州など環境で少しずつ違った特徴がある。地域の動物を地域の環境で展示することで、動物から地域環境を認識することができる。

 おびひろ動物園の可能性として、他園との差異化や独自性が必要。“北の動物園”として樹木、草木を使い、起伏も活用し日高大雪山系、十勝平野の環境を再現するのがいいのではないか。

 本州と北海道の動物分布に「ブラキストン線」という境界がある。北海道はヒグマ、エゾタヌキ、本州はニホンカモシカ、ニホンザルなど。これをそれぞれ分けて展示する。十勝を認識し、社会問題なども考える場になればいい。

 イメージとしては本州エリアと北海道エリアの中央に建物を作り、両エリアを同時にパノラマとして見ることができるようにする。十勝の歴史や文化を伝える馬や牛と触れる体験もあればいい。自然に焦点をあてた、世界にひとつだけの動物園になればいい。

帯広動物園将来構想案 ブラキストン線をこえて



〈わこう・けんじ〉
動物園デザイナーとして、宇部市ときわ動物園、天王寺動物園、よこはまズーラシアなどの設計に携わる。宇部市ときわ動物園「中南米の水辺」等の施行で国土交通省都市交通局長賞など高く評価を受けている。





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