意見を出し合い夢を形に―。おびひろ動物園(柚原和敏園長)の未来を語り合う「魅力アップを考えるフォーラム」が26日午後1時半から、帯広市内のとかちプラザで開かれる。施設の老朽化や動物の高齢化、財源問題などの課題を乗り越え、どのような形を次世代に残していくのか。市民が動物園に何を望み、管理者の市はどのような判断をしていくのか、新たに始まった動物園を考える動きの行方が注目される。
おびひろ動物園の魅力アップを考えるフォーラムおびひろ動物園は1963年に開園。管内唯一の遊具併設の動物園で年間約17万人が訪れ、住民の憩いの場として地域に愛されてきた。一方、開設56年を迎える今、動物の高齢化や施設の老朽化など課題は山積み。平成が終わろうとしている中、多くの獣舎は“昭和の動物園”の様相を呈している。
こうした状況は全国的に見ても帯広だけではない。自治体運営による財政難に加え、2000年ごろからは世界的に種の保存にかかる繁殖や動物福祉が重視され、動物園は単なる「娯楽施設」では通用しなくなっている。
日本の園は世界の流れに遅れを取っているのが現状。動物園問題に詳しい東京大学大学院の木下直之教授は「厳しい財政状況においても、市民のために運営を続ける『意義』を見いだすことが大切」と指摘する。
全国的には、苦境を脱しようと新たな取り組みを始め、評価されている動物園もある。
大牟田市動物園は、動物の豊かな暮らしに向けた取り組みを評価する「エンリッチメント大賞」に16年度輝いた。動物の健康管理へ採血や体重測定などを行い、日々のトレーニングを欠かさない。こうした取り組みが「面白い」と話題を呼び、17年度の来園者数は過去4番目に多い約24万人を記録した。
よこはま動物園ズーラシアは希少動物の研究・繁殖拠点となる研究所を敷地内に設け、インドネシアや海外各国と協力。マレーバクなどの繁殖に取り組む「横浜市繁殖センター」では、専任の研究員が希少な野生動物に関するさまざまな調査を行っている。
おびひろ動物園でも、動物に少しでも自然の環境で暮らしてもらおうと試行錯誤が続く。16年に生まれたゴマフアザラシの「マシロ」(雌、2歳、現在は円山動物園)。母親のモモは流産、死産が続いていたため、同園では23年ぶりの誕生となった。冬場は全面結氷していたプールの氷を職員が割り、自由に泳げるように。運動不足が解消されたためか、無事に出産し、18年にも妹の「ミナ」が生まれた。
このほかにもアミメキリンやライオン、エゾシカなどのトレーニングを日々続け、採血や体重測定に成功している。
おびひろ動物園の取り組み
おびひろ動物園では17年にも、将来像を考える「未来の動物園を考えるフォーラム〜語ろう帯広ならではの動物園の夢〜」を開催した。このときには、動物園デザイナーとして全国的に活躍する若生謙二さんが講演し、帯広ならではの展示方法を提案した。
若生さんは地域資源を活用した動物の展示が大切と強調し、「動物園の役割は生物多様性への理解を育み、その生息環境を認識し、保護のメッセージを伝える場」と話した。その上で本州と北海道の動物分布を分ける「ブラキストン線」を挙げ、「本州エリア」「北海道エリア」に分けた展示法を一例として示した。
若生謙二氏 講演
「寒いところや北海道に住む動物に力を入れ、雪や氷を生かした独自展示を」「トイレが少なく、老朽化している。休憩場所を増やして」―。帯広市は昨夏から、おびひろ動物園の今後を検討する「魅力アップ検討委員会」をスタートさせた。庁内の観光課やみどりの課などの関係課が横断的に参加して議論を始め、昨年9月には帯広畜産大や市PTA連合会も含めて方向性を検討している。
施設の老朽化、高齢化した動物への福祉などの課題に加え、昨年9月には地震による大規模停電が発生し、暖房や冷蔵庫など緊急時の備えが不十分なことも分かり、新たな課題も突きつけられている。
動物たちの命を尊重し、どう共に生きていくのか―。「動物園のあるまち」として夢を語り合いたい。
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26日のフォーラムでは旭山動物園(旭川市)の坂東元園長が「北海道の動物園・水族館にできること」をテーマに話す。坂東園長、柚原和敏園長(おびひろ)、加藤修園長(札幌円山)、古賀公也園長(釧路市)、伊勢伸哉館長(小樽水族館、日本動物園水族館協会副会長)の5人によるパネルトークも予定。動物の飼育や展示の仕方など世界や日本の現状を知り、参加者からの意見を募る。
参加は無料で、定員先着150人。申し込みはおびひろ動物園(0155・24・2437)へ。