十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年8月号

特集/十勝で涼む

「丸描いた!」大切な成長の瞬間~あのね、こどもはね(4)高橋由紀雄氏

筆者の子が3歳になる少し前に描いた顔。何度でも描いて消せるおもちゃでよく絵を描いていた

 はじめまして、子ども福祉専攻の高橋由紀雄と申します。5年前まで釧路に住んでいて、幼児の造形教室や絵画教室を主宰したり、大学や高校で教員養成や美術教育にも携わったりしました。最後の8年ほどは専門学校での保育者養成にも関わり現在に至ります。

 子どもが1人います。一昨年の春に釧路でも帯広でもなく、札幌の高校を選んだことで少し早く親元から離れてしまい、急に子育てが終わってしまったのだろうかと寂しく感じているところです。

 ここでは実体験に基づいて、子どもの様子や造形教室でのことなどを紹介します。子どもの絵の見方や遊びの中の造形的なこと、それを見守る大人が気を付けることなどをお話ししたいと思います。

 ところでみなさんは、子どもが「まる・◯・丸・円」を描けるようになった瞬間を目撃したことはありますか?

 私は自分の子どもが絵を描くところをよく見ていましたので、丸を描けるようになった瞬間も見ることができました。一般的には子どもが初めて立ったことや歩いたことは大きく取り沙汰されますが、それは他の動物にも当然あることなので、人間ならではという部分にもっと注目してほしいと思うのです。

 線を描くこと、ましてや自らの工夫で丸を描き、組み合わせるなんて、人類以外では成し得ないすごいことなのですが、あまり注目が集まらないのはなぜでしょう。

 座ることで手が自由になった子どもは、クレヨンやマーカーなど画材に興味を持つと、それを紙にぶつけてみます。そのぶつかった痕跡が紙に残ることに気がついた瞬間の子どもの目。腕を動かしたらその動きに伴って痕跡が続くことを発見した瞬間の不思議そうな顔。痕跡と腕の動きの関係性を確信し、喜々として左右になぐり描きを楽しむ姿。

 そのどれもが大切な瞬間で、それを見守る目線がその後のお絵描きにもすごく大事なことなのです。

高橋由紀雄先生


<たかはし・ゆきお>
 帯広大谷短期大学社会福祉科こども福祉専攻専任講師、木育マイスター。北海道教育大学釧路校出身、京都芸術大学大学院芸術研究科(通信教育)芸術専攻に在籍中。釧路で美術関連講師やグラフィックデザイン業と並行し、くしろせんもん学校で保育者養成に関わり2020年から現職。その他、美術館などの講座やワークショップ講師、木育に関わる木工作や木育楽器を開発。