十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2025年1月号

特集/今食べたい 冬の鍋

今食べたい冬の鍋(6)「知ってる!?十勝の鍋トリビア」

いろりにつるして使用した、開拓期の鉄鍋。少しの塩やみそで味付けをしていたようだ

 十勝や北海道特有の鍋文化、歴史について、あなたは知っていますか?

トリビア(1)
依田勉三の「一つ鍋」ってどんな意味でどんな鍋!?
妻たちの記憶に残り続けた晩酌タイムの自虐の戯れ

 十勝の人にはなじみある、〝開墾(開拓)の始は豚と一つ鍋〞という依田勉三の一句。「それは入植2〜3年目の依田、鈴木銃太郎、渡辺勝・晩成社三幹部の晩酌のやりとりで、依田の最初の妻リクと鈴木の妻カネが覚えていたことです。聞き取り当時で50年以上前の話なので、あいまいな部分もありますが」と、帯広百年記念館の大和田努さん。

 その頃に彼らが主に食べていたのが、わずかな野菜や米、野草と煮ていた鮭のホッチャレ(産後の体がボロボロになった鮭)。養豚の飼料にもなり、人も豚も同じものを食べていたことから、鈴木か渡辺のどちらかが、〝落ちぶれた極度か豚と一つ鍋〞という一句をひねった。そんな精神ではいけないと、依田が開拓への覚悟に詠み直したという。秋の夜、豚と一つ鍋をさかなに「3人は酔いながら自虐をしつつ句を詠み合い盛り上がったのでは」と大和田さん。

 厳しい生活を笑い飛ばして生き抜く、たくましさを象徴するような鍋だった。

帯広百年記念館で歴史を担当。晩成社に詳しい学芸員の大和田さん


<帯広百年記念館>
帯広市緑ヶ丘2 緑ヶ丘公園内
Tel:0155・24・5352
営:9時~17時(入館は30分前)
休:月曜(祝日は開館、翌日休み) ※12/29~1/3は休み
参考/北海道晩成社 十勝開発史(復刻版)




トリビア(2)
全国的にすき焼きは牛肉なのに北海道は豚肉が主流という謎

 帯広畜産大学「生命・食料科学研究部門」の島田謙一郎教授によると、「北海道は酪農家などの生産者が多く、『昔から牛を食べるのはかわいそう』と感じる傾向がある。また牛肉は高価でぜいたくという認識もあるのでは」とのこと。元来北海道には室蘭焼き鳥(豚肉を使用)や豚丼など、豚肉を使ったご当地メニューが多い。豚肉好きの道民が生んだ食文化かも!?




トリビア(3)
北海道の郷土鍋には「十勝鍋」もあります!

 たっぷりの野菜に鮭、豆腐など大地の恵みと海の幸を盛り込んだ十勝鍋。石狩鍋に似ているが、十勝鍋はだし汁に牛乳とみそを加えて煮込み、さらに豆乳を入れることでまろやかさとコクを出す。

 家庭によっては豚肉を入れるが、「畑の肉」と呼ばれる大豆素材を使うことで、あえて肉を使わず作ることも。ジャガイモ入りなので食べ応えも十分。

参考/郷土料理研究家 村田ナホさんのレシピ

※フリーマガジン「Chai」2025年1月号より。
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