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研究成果を社会に還元 産学連携センターの東陽介氏に聞く【ちくだい×SDGs(20)】

須貝 拓也

十勝毎日新聞社 編集局 コンテンツグループ

 研究や教育を通してSDGsを実行し、地域と連携しながら実践的な問題解決に取り組む帯広畜産大学。連載企画の最終回は産学連携センター副センター長の東陽介氏に、これまでの取り組みや今後の展望などを聞いた。

 -産学連携センターの取り組みについてお聞かせください。
 当センターは企業や農業経営者といった産業界と大学を結びつける最初の窓口となります。食料を生産する農場から家庭の食卓まで、農業地域で暮らす人たちの課題を解決し産業を活性化すべく、大学の研究成果を社会に還元することを目的としています。大学の研究機関というと少し敷居が高く感じられるかもしれませんが、まずは当センターを通じて気軽にご相談いただければと思います。

産学連携センター副センター長の東陽介氏


 2021年より「企業等集積プラットホーム」という仲間づくりの取り組みを始めました。加盟していただいた方々に、大学の最新成果を発信すると同時に、加盟機関や十勝管内の市町村とJAを回って意見交換しながら最新の課題を掘り起こすことを目的としています。さらにその課題について交流会を企画することで、地域に暮らす人たちとの意見交換の場づくりにも力を入れています。

 このような意見交換の中から地域の要望が高い課題として、農業や畜産業における未利用資源の有効活用に向けたコンソーシアム(複数の組織で結成された共同体)の構築に取り組んでいます。

産学連携センターで開かれた交流会の様子


 地域課題の実例としてはバイオガスプラントから出る家畜ふん尿処理が挙げられます。現在、十勝管内で稼働しているバイガスプラントは家畜のふん尿をメタン発酵させバイオガスを回収し、発電機やボイラーの燃料として利用されています。その一方で、ふん尿からバイオガスを取り出した後に残る液体(メタン発酵消化液)の処理が課題として残っていました。この消化液は河川などへの放流は認められていないので、畑へ散布するローコストな液肥として利用できれば地域循環農業の実現に大きく寄与することができます。

 ただ、その利用方法について科学的な検証が十分ではなかったため、畑作農家からの引き合いは多くはないのが実情でした。そこで十勝総合振興局や農業試験場、企業などと連携を図り、消化液利用の研究成果などを盛り込んだマニュアル作りに着手することで、さらなる普及を目指しています。

 また未利用資源には食品加工会社や畑作農家から排出される野菜くずもあります。廃棄や輸送には多くのコストを必要とするので、地域の枠内で上手に利用することが求められていました。そこで現在、十勝管内におけるこれらの未利用資源を種類別に分け、いつ、どこで、どれくらいの量があるのかをデータベース化しました。「見える化」することで、地域の循環的な利用を進めます。

 いずれの取り組みも、その実現にはいくつかの企業が結びつく仲間づくりが必要不可欠。そのお手伝いをするのは当センターの重要な役割となります。

 -今後の展望をお聞かせください。
 コロナ禍で開催が難しかった交流会を今後は増やしていきます。参加者が200人ほどの規模になる産学官金連携交流会のほか、30人ほどの小規模なものまで、さまざまなスタイルで交流促進を図ることで、より社会に貢献できるテーマを見つけ、実践的な研究開発を支援していきます。

 また、研究の対象となる地域現場に近いという地理的に恵まれた大学内の農場施設と緊密に連携し、企業と一緒に共同研究できる場を増やしていきたいです。

 例えばICT(情報通信技術)を強化した大学内の新牛舎では、さまざまな企業と連携して、ICTやAI(人工知能)を用いた乳牛の活動データを解析しています。日々の採食量など乳牛1頭ごとのデータを24時間記録することで、生産性向上に役立てようとしています。

 このような環境で学生も企業との共同研究に加わるケースが増えています。より実践的な農業課題を学ぶことで、持続可能な社会の実現に貢献できる教育につながればと考えています。

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