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車との衝突、農業被害…野生動物との共存の道は? 浅利裕伸准教授に聞く【ちくだい×SDGs(11)】

 -研究のテーマを教えてください。
 野生動物と人との関係について研究しています。

 家を建てる、道路を作るといった開発行為で人は便利になる一方、野生動物はすみかが無くなる、分断されてしまうといった大きな影響を受けます。

 また、帯広など市街地には緑地がたくさんあり、野生動物のすみかになっていますが、人との距離が近ければ野生動物の生活が変わるなど人側から与える影響もありますし、動物側から人に病気を感染させてしまうといったリスクもあります。

 加えて、十勝はシカやアライグマによる農作物被害が深刻で、どう防いでいくかも課題です。

浅利准教授


 -テーマごとに研究をお伺いします。ロードキル(野生動物と車の接触事故)について、どんな研究をしていますか。
 十勝のように耕作地が広がっている地域では、野生動物がすめる森林が限られてきます。

 そこで、まとまった森林となる防風林が、すみかや移動などに使われています。防風林と道路が交差するところが生まれますが、こうした場所で事故が発生しやすいのではないかと考え、調査しました。

 調査方法は、夜間に車で走行し、野生動物がどこで出てくるのかを記録していきます。当初は対象動物を決めずに始めましたが、キツネが多く出ていたことから最終的にはキツネを対象としました。

 調査地域は音更町から士幌町付近で、防風林を通過するように走行ルートを三つ決め、定期的に時速20キロ程度で走行します。動物を見つけた場所をGPSで記録し、防風林からどれくらい離れたところでキツネが見つかったかを表したものがこのグラフですが、200メートル以内で多く出没するという結果が出ました。防風林が近くにある場所では動物がいるかどうかを気をつける、といったドライバー側の対策につながります。

 -ロードキルを減少できれば、希少動物を守ることにもつながります。
 ロードキルの研究は国内のさまざまな場所で行っていますが、最も多いのは奄美大島です。

 奄美大島などにのみ生息する国の特別天然記念物「アマミノクロウサギ」など希少な生き物が多く、ここでしか見られないカエルやイモリも多数生息しています。ただ、カエルやイモリは小さいので被害に遭いやすい現状があります。

 別の調査で訪れた時、30分ほど車で走っていると、1本の道で200匹ほどのアマミシリケンイモリという奄美大島などに分布している希少なイモリがひかれて死んでいるのを見つけました。

 奄美大島は昨年、世界自然遺産に登録され、観光客が増えていくとされています。その分、交通量が増えるのでロードキルの増加も予想されます。この経験から、カエルやイモリがどれくらい被害に遭っているのかを調べました。

 ここでも10キロのルートを三つ作り、(1)田畑エリア(2)山間部(3)山奥―といった条件の違う場所でカエルやイモリがロードキルに遭った数を数えました。最も多かったのがアマミシリケンイモリでしたが、ルートによって被害数に若干の違いが生じ、季節によっても差が見られました。季節差の理由は分かっていませんが、他のカエル類も種類によってロードキルに遭いやすい時期が限定的な種もいれば、違いが見られない種もありました。

アマミハナサキガエル

シリケンイモリ

ロードキル数


 -気を付ける季節、ルートなどが分かったんですね。対策としてはどのような研究をされていますか。
 対策の研究では、アマミノクロウサギを対象にしました。

 動物を道路に進入させないことが一番いい方法ですが、市民の生活にも配慮が必要ですし、コストもかかります。そのため、ドライバー側への対策を並行する必要がありますが、なかなかドライバー側への効果的な対策はありません。よく標識で「シカの飛び出し注意」といったものがありますが、どうしても慣れが生じてくるため効果が高いとは言えません。

 効果を高めるために、海外ではリアルタイムでの出没情報が効果的だろうと言われていますが、実際に取り組んでいる事例はすごく少ないです。その観点から、私たちは動物検知システムを企業に作ってもらいました。動物がセンサーの前を通過すると反応し、電波を送ることでパトランプを回すシステムにしました。それがどれだけドライバーに対して減速効果があるのかを調べたんです。

 (1)何も設置してない時の速度(2)動物注意の看板だけ設置した時の速度(3)パトランプを回した時の速度―を調べ、速度がどれだけ減少したかを見ました。結果は(2)の看板だけでも速度は低下しましたが、(3)のパトランプを回すことでより速度の低減が見られ、その場所で動物を探し始める人も現れました。

 パトランプによって速度も落とすし、生き物をきちんと見てくれるという効果が見られました。ただ、人は慣れてしまうものなので、住んでいる人全員に効果があるのかどうかは分かりませんが、奄美大島の場合は観光客が増えると予想されているので、“いちげんさん”への効果は期待できます。

動物を検知するセンサー


 -また、リスなどをはじめ、野生動物と人とが接触することでのリスクも研究されています。
 十勝はリスをはじめ生き物が好きな人も多く、公園にも野生動物がいるので近寄りすぎてしまうことがあります。

 例えば餌付けには、リスの体のつくりが変わったり、行動が変わったりするリスクがあります。また、生活パターンが変わるといったことは海外でも報告されていて、リスの生態に変化を及ぼしてしまうんです。

 逆に、リスが人に対して感染症を与えるリスクもありますが、分かっていない部分もあります。私たちはリスなどの野生動物と人が同じエリア、時間帯を使うかを調べつつ、獣医の先生と感染症になりうる病気を調べています。

動物検知システムの看板。動物が通ればパトランプが光り、ドライバーに知らせる


 -また、シカやクマなどによる農林業被害も深刻です。こちらの研究はどうですか。
 学生のクマの活動性を調べたいという声をきっかけに、人が利用する山と利用しない山で調査をしていました。カメラを仕掛けたのですがクマがなかなか映らず、シカが多かったのでシカに研究対象を切り替えました。

 シカは他の研究でも、人が活動することによって活動性が変わっていることが分かっています。もともとは日中に行動しますが、人が生活することで夜行性にシフトします。どこのシカも大体同様で、人の活動がなくなると日中の活動に戻りそうだということも知られています。

 調査では登山道にカメラを設置し、山を歩く人たちの活動がどれだけ山中のシカの行動を変化させるのかを調べました。

 人の活動がシカの行動に影響を与えることが分かれば、農林業被害をどう防ぐかの一つのヒントになります。(1)登山道の近く(2)人の声がしないほどの山奥―にカメラをセットし比較すると、(1)では薄明薄暮、夕方と朝、夜間に動き、日中はほとんど動かないシカが多い。(2)では日中に動くというデータが明らかになったので、活用することで人と野生動物の距離感が分かり、農地にシカを進入させないための対策につなげることができます。




<あさり・ゆうしん>
 秋田県生まれ。東京農業大学、帯畜大など4大学で構成する岩手大学大学院連合農学研究科修了。専門は動物生態学、野生動物管理学,、ロードエコロジー、アーバンエコロジー。

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