十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

ギュウ~っと十勝(2)「三部牧場(鹿追町)」

樹齢100年のハルニレの大木を中心に据えた、高さ4mのツリーハウス。ここが酪農の魅力を伝える拠点だ

ツリーハウスから伝える酪農の魅力
 「酪農を体験する機会は多くない。感動してくれるとやりがいを感じる」と、三部牧
場を経営する三部正司さん(63)は目を細める。

 農家民泊を始めたのは10年前。酪農業の魅力を伝えようと、2004年に〝自分の隠れ家〞として敷地内に造った「ツリーハウス」を公開した。宿泊者限定で、牧場見学や搾乳などの体験メニューを用意。ハウスの非日常感も手伝い、道内客中心に予約が絶えない。

〈バター作り朝食セット〉(1人1600円)は、搾った牛乳と生クリームをシェイクして、バター作りを体験できる。牧場で取れたハチミツと一緒にパンに塗ったおいしさは格別※写真のパンは2人前


 搾乳牛150頭の他、ヤギや豚、ニワトリもいる。「この牛舎は若い牛で〝保育園〞。えさも違うよ」。親牛になるまで、爪や角のこと。話は尽きないが、中でも伝えたいのは「命」だという。体験には、石窯ピザ作りや手作りバターで食べる朝食もあり、その素材は牧場の牛乳や豚から作ったベーコン、地場野菜。「命をおいしく『いただく』意味を考えるきっかけにしてほしい」と力を込める。

酪農業は、365日気が抜けない。「苦労? 思ったことがないかな。これが当たり前の姿だし」


 一方、民泊は自身のためでもあるとか。一度出荷した牛乳は、誰の口に入るか分からないが、「目の前で飲んでおいしいと言ってくれる。うれしいよね」。農家民泊含む6次産業化は十勝でも進むが、その背景はとてもシンプルかもしれない。

石窯も手作り。おいしさを通じて食材の価値を伝える



<三部(さんぶ)牧場>
 鹿追町柏ヶ丘16-3 
Tel:0156・66・2802
 宿泊は1人5,000円、小学生以下2,500円
※各体験メニューは別途料金


※フリーマガジン「Chai」2018年9月号より。
※撮影/辻博希。写真の無断転用は禁じます