2024年4月号

特集/ときめきのプリン&愛しのシュークリーム

もしもの備え(4)「災害時のお金にまつわるQ&A ファイナンシャルプランナー山崎増美さん」

小銭の用意もお忘れなく!

 一瞬で日常を変えてしまう災害。そんな時にこそ、コツコツ蓄えてきた備えや保険が役に立ちます。災害時に落ち着いて行動するために知っておきたい保険やお金の知識を、ファイナンシャルプランナーの山崎増美さんにお聞きしました。

Q1 停電でカードが使えない! 普段から気を付けたいお金の備えって?
A 現金をはじめ、複数の決済手段を持ちましょう
 胆振東部地震による停電ではATMが停止し、一時的に現金の引き出しができなくなりました。最近はカードで支払いを済ませる“キャッシュレス派”の人が増えていますが、停電が起こると電子決済の機能は完全に停止してしまいます。「いくらあれば安心」という正解の金額はないものの、手元にある程度まとまった現金は必要でしょう。非常時は紙幣だけでなく、小銭の用意もあると便利。現金に加えて、電子マネーなど複数の決済手段を持っていると心強いですね。

<ワンポイントアドバイス>
暖房、食糧、照明などにプラスして、現金の備えも忘れずに。災害グッズをまとめたリュックの中に、お金も入れておきましょう。また普段から不測の事態に備えて、「いざという時の貯蓄」をしておくこと。計画的に積み立てられるよう、今から仕組みづくりを!

Q2 避難時に通帳をなくしてしまった!
A 災害時は本人確認があれば、払い戻しができます
 キャッシュカードや通帳を紛失しても、災害時には金融機関が緊急対応をしてくれるので慌てる必要はありません。災害救助法が適用されるような事態になると、日本銀行が「災害時における金融上の特別措置」を要請。すると金融機関では、運転免許証などによる本人確認だけで、払い戻しの措置を取れるようになります。保険・株式・債権も同様の措置が取られるため、心配しなくても大丈夫。また破れたり汚れたりするなど、破損してしまった紙幣の引き換えにも応じてくれるので、保存しておくことが大事です。

災害時に通帳がなくても焦らずに!


<ワンポイントアドバイス>
 普段から財産を把握しておくことが大切。どの銀行にいくら預けているのか、どの保険会社と契約しているかは最低限まとめておくべきです。また、家計を預かる人しか家庭の財政状況を知らないというのも困りもの。お金の情報は家族全員で共有できるといいですね。

Q3 地震がきっかけで自宅が火事に。火災保険は使えるの?
A 地震が原因で起きた火災は、火災保険の対象外
 民間の保険で自然災害に備えられるものに、火災保険と地震保険があります。地震保険は単独で加入することができず、火災保険に付帯する契約です。質問にある「地震がきっかけの火災」については、地震保険の対象。大地震が起こると隣家からの「もらい火」による火災が多発しますが、火元になった家が弁償する義務はないため、地震保険に入っていると安心です。ちなみに地震による津波なども火災保険ではフォローできません。月々の保険料と補償内容のバランス、現在の貯蓄額などを踏まえて加入を決めましょう。

火災保険・地震保険の対象を整理しよう


<ワンポイントアドバイス>
 家にまつわる保険に、もう一つ「家財保険」があります。家財とは家電製品、衣類、収納家具など。生活に必要なものを最低限買いそろえるだけでも、高額になるものです。現在加入している保険が家財も保障の対象なのか、確認することをお勧めします。

Q4 地震で自宅が崩れ、会社も休業。今後の生活に不安が…
A 支給・貸し付けなどの支援制度が利用できます
 市町村にはさまざまな弔慰金や見舞金の制度があるので、ぜひお役立てください。住居が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対しては「被災者生活再建支援制度」があります。支援金の目安は住宅全壊で100万円、大規模半壊で50万円など。用途が限定されていないものもあるため、当面の生活費に充てることもできます。そのほか遺族に対しての「災害弔慰金」、災害によって体や精神に障害を負った場合に支給される「災害障害見舞金」、貸し付けによる「災害援護資金」なども。詳しくは市町村に問い合わせを。

大災害が起きるとお金がかかるもの


<ワンポイントアドバイス>
災害による収入の減少など特別な理由がある場合、公共料金や税金の減免・猶予、債務の免除が認められます。ただし自動的ではなく、手続きをしなければ利用できない制度があるので、内容を知っておくことが大切です。

<教えてくれた人>
ファイナンシャルプランナー 山崎増美さん


金融機関、不動産管理会社を経て、2007年に「FP山崎増美事務所」を設立。企業や個人のマネーコンサルティングや各種マネーセミナー講師、執筆活動などを行っている。FP、宅地建物取引士などの資格を持つ。
FP山崎増美事務所
帯広市新町西2丁目10
Tel:0155・41・7661

※フリーマガジン「Chai」2018年12月号より。