十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2025年7月号

特集/夏本番!旨辛メニュー

知っているものに出会う喜び求める~あのね、こどもはね(11)滝澤真毅氏

もう一つの名札

 帯広市役所の仕事で、市内の保育所を訪れました。保育の様子を見せていただき、保育の中で子どもたちにどんなふうに対応するか、先生方と話し合う仕事です。

 私はこういうとき、名札を二つ身につけています。一つはよく園児が着けている花の形をした名札で、ひらがなで名前が書いてあります。もう一つ、首からさげるネームには「ひげじいさん」という文字と、簡単な似顔絵が描いてあります。

 年少さんの保育室に行くと、近づいてきた子どもたちは私のネームを指さして「なんて書いてあるの」と尋ねます。私は文字を指さして「ひげじいさん」、そして似顔絵を指さして「ひげボボボボボ」と答えます。これが3歳児にはとてもウケるのです。子どもたちは入れ替わり立ち替わり、「なんて書いてるの」「ひげじいさん、ひげボボボボボ」というやりとりをしては、笑ったりずっこけるしぐさをしたりします。何度も何度も聞いてくる子がいます。

 ポケットからハンカチタオルを出して、顔の下半分を覆って、「ひげ、ないよ」というのも、よくやります。「ないよ」「ある」「ないよ」「あるよ、タオルでかくしてる」というやりとりのあと、タオルをはずして「あったー」というだけなのに、「またやって」と求めてきます。

 「小さい人たちって、なんでこんな単純なことをこんなに面白がって繰り返すんだろう」と思うことがよくあります。赤ちゃんも、同じ遊びをエンドレスで繰り返し求めてきますよね。ある先生が、子どもたちは「知っているものに出会う喜び」を求めていると述べていましたが、こういう繰り返しは、反応や展開が予想通り、というところに安心感があるのだろうと思います。(滝澤真毅)

滝澤氏


<たきざわ・まさき>
 帯広大谷短期大学社会福祉科教授。保育士。臨床発達心理士。音更大谷幼稚園アドバイザー。専門は発達と保育の心理学。北海道大学教育学部出身。釧路短期大学、山形短期大学(東北文教大学短期大学部)を経て2010年から現職。短大の仕事のほか、保育現場での研修や相談、自治体の乳幼児健診の発達相談なども担当している。