おいしいチーズがある幸せ(3)「世界から注目されるチーズ~TOYO Cheese Factory」

同工房の看板商品〈age07Hard〉〈age04Cheddar鰹KATSUO〉。美しいパッケージも目を引く。07は七海牧場(更別村)の生乳のみを使用し、12カ月以上熟成。04鰹は国産本鰹の厚削りを加え、うま味を相乗する
高品質をかなえる妥協なきこだわり
芽室町 TOYO Cheese Factory(トーヨーチーズファクトリー)
2020年に創業したTOYO Cheese Factory。十勝にあるチーズ工房としては歴史が浅いものの、既に国内外のコンテストで輝かしい結果を残している。昨年は日本最大級のチーズコンテスト「ジャパンチーズアワード」のラクレット部門で〈age02Raclette〉が金賞・最優秀部門賞、〈age04Cheddar鰹〉が銀賞を受賞するという快挙。さらに今年9月、フランスで開催された国際的なチーズの祭典「モンディアル・デュ・フロマージュ」でも、ハードタイプのチーズ〈age07Hard〉がブロンズ(銅)メダルを獲得した。
世界品質のチーズは、一貫したこだわりから生まれる。自社のミルクタンクローリーで集乳して鮮度を大切にするのはもちろん、仕入れは十勝にある4つの契約牧場に限る。しかも合乳せず、各牧場の生乳を単一で使うという徹底ぶり。さらに国際規格の食品安全基準「FSSC22000」を取得し、衛生面においても高いレベルを保持している。
代表取締役の長原覚さんは、農作物用の紙袋などを製造する「東陽製袋」の代表も務める。「十勝の農業に貢献したい」と一念発起して、チーズ製造に挑戦。「10年以上におよぶ構想が実を結びました」。世界の市場も見据えており、2年前からシンガポールに輸出も行う。
チーズのエキスパートが、世界へ「十勝」を発信
同社のチーズを広めた立役者の一人が、取締役である長原ちさとさん。チーズの知識をはじめ、美しいカットの技術や盛り付け(チーズプラトー)のスキルなどが問われる「フロマジェ」の資格を持つ。2021年には日本代表として「世界最優秀フロマジェコンクール」に参加し、3位に入賞した実力者でもある。
「日本産チーズの質の高さは、世界に知られています。私は一歩進んで、世界へ『十勝』をアピールしたい。日本のチーズ工房の1割が十勝にあり、生乳の生産量も日本一。高い目標を持つ生産者も多いので、大きな可能性を感じます」と、ちさとさんは意気込む。
11月にはラクレットチーズの本場・スイスで開催される「ワールドチーズアワード」で入賞を目指す。大手乳業メーカーでの経験もある専務取締役の七海一樹さんは、大会への参加をブラッシュアップの機会と考えている。「海外では日本のチーズの味は淡泊だととらえられることもありますが、クリアで美しい〝日本らしい味〞を貫きたい。スイスの気候は十勝と似ているので、どう評価されるのか興味深いですね」。世界に挑むたび、ますますおいしくなるチーズ。そのたゆまぬ進化から目が離せない。
芽室町東芽室基線3-5
Tel:0155・62・0007
ホームページ:https://age-2020.com/
※商品の購入はホームページから
チーズプラトーに挑戦!
チーズを美しくカットして、皿やトレーに盛り付ける「チーズプラトー」。長原ちさとさんに、家庭で簡単にできるコツを聞きました。
<POINT>
(1)チーズをパッケージから出したらまず表面のフィルム跡を包丁で優しくなでるようにそぎ落とす。そうすることで切りたての断面を再現でき、閉じ込められていたチーズ本来の香りが出る
(2)均等な厚みに切るには刃の薄い包丁を使用し、上から全体を見ながらカットする
(3)チーズは完全栄養食品と言われるほど栄養バランスが良いが、食物繊維とビタミンCは含まれないので野菜や果物を添えて食べると良い
(4)ハーブなどのグリーンを添えると見た目も◎
-column コラム-
まずは基本を押さえよう
チーズの種類
チーズは大きくナチュラルチーズとプロセスチーズに分けられます。ナチュラルチーズは微生物や酵素の働きで熟成していきますが、プロセスチーズは製造過程で熟成を止めてしまうので、品質の変化が起こりにくく保存や管理がしやすいです。
※フリーマガジン「Chai」2025年11月号より。
※撮影/平栗玲香。写真の無断転用は禁じます。
おいしいチーズがある幸せ
酪農王国・十勝は、日本を代表するチーズの生産地でもあります。おいしいチーズがたくさんそろう、恵まれた環境なのです。











