十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

そばのおいしい季節です(7)「今日の気分に応える十勝そば屋めぐり~そば処 丸福、お食事処 四季」

現在の店舗は築30年ほど。隆一さんの父・隆雄さんが集めた古道具が和の雰囲気を盛り上げる

 毎日通っても制覇できないほどそば屋が充実している十勝。店の雰囲気や好みに合わせて選べる個性派のそば屋を紹介します。

帯広市 老舗のそばを味わいたい
そば処 丸福
昨日と変わらない味に 代々受け継がれる思いを込めて
 1920(大正9)年創業の老舗そば店。そば・つゆ・ゆでの三位一体を貫き、「昨日と変わらない味を出す」との思いを代々受け継ぎ、2015年からは4代目・千葉隆一さんがのれんを守る。

 現在の味を確立させたのは隆一さんの祖父・惣助さんで、名物の〈冷やしかしわ〉や〈かに天〉も惣助さんが考案した。子どものころから祖父や父の姿を見つめてきた隆一さんにとって、その味は大好きな家庭の味であり、身体に染みついているもの。「自分が店に立たなければ味が途絶えてしまう」と、20年ほど前から厨房(ちゅうぼう)に立つ。

 「変わらない味」と言っても、玄そばの品質や調味料の原材料は長い年月の間に変化や進化を遂げる。それでも同じ味を作り続けるのは日々学びの積み重ねだ。隆一さんは「常連さんに支えられて今がある。うちの店を気に入ってくれるお客さまがいる限り、自分も努力し続けます」とほほ笑む。

滋味深い若鶏ムネ肉をトッピングした〈冷やしかしわ〉1,080円は店の代名詞ともいえる逸品。そばの太さを季節によって変えるなど、客に気付かれない程度の工夫を凝らしている

「気がつけば100年経っていました。だからと言って敷居が高いわけではなく、あくまでも街のそば屋さんです」と隆一さん


帯広市西1条南10丁目19
Tel:0155・23・5717
営:11時~15時(LO15分前) 
休:なし(不定休あり)




座席ごとにある窓から眺める雄大な田園風景は、のどかで温かい店の雰囲気につながっている


中札内村 美しい景色に癒やされたい
お食事処 四季
四季折々の景色とともに味わう手打ちそば
 とかち帯広空港から車で5分。小麦や小豆畑など十勝らしい景色に囲まれ、そばを打つのは、2021年に店を受け継いだ2代目店主の木村一広さん。自分がおいしいと思うそばを作りたいと、さまざまな産地のそば粉を試しながら今の味にたどり着いた。のど越しの良い二八そばと、ザラメをいれた甘めのつゆが人気だ。

 「そば好きは舌の肥えた人が多いから、満足してもらえるか毎日ドキドキしています」と木村さん。理想は最後の一滴まで飲み干したくなるほどおいしいそば。「味を覚えて帰ってもらいたい」とあえて後味の余韻を残すつゆは、一度食べるとクセになる。

〈とり天そば(温・冷)〉1,400円は今年の夏から始めた新メニュー。ぷりぷりのとり天はつゆをたっぷりと絡めていただきたい

前職の技術職の器用さを生かしそば職人の道へ進んだ木村さん。「手打ち手切りならではの味わいを大事にしたい」と、独学でそばの技術を身に付けた


中札内村共栄144-4 
Tel:0155・63・1511
営:11時~15時(LO30分前) 
休:火・水曜

店は築60年の馬小屋を先代が改装したという。古くなった部分は自分で修理し、店の顔を守り続けている


※フリーマガジン「Chai」2024年10月号より。
※撮影/辰巳勲。写真の無断転用は禁じます。