そばのおいしい季節です(6)「引き継がれる伝統の味~正己 秦食堂、かし和家、そば蔵大正(笑)庵」
「町を盛り上げたい」。重なる思いを師匠から弟子へ
正己 秦食堂
1947(昭和22)年創業の秦食堂は、親子3代でのれんを守ってきた老舗そば屋。昨年7月から休業していたが、今年7月より後継者に地域おこし協力隊の山崎聖弥さんを迎え再出発した。
提供するそばは幌加内産のそば粉を使用し、つなぎは一切使わない十割そば。そば打ちの際に熱湯を使用してそば粉の粘りを強め、切れることなくコシが強い麺を作り出す。
7月から秦さんと一緒に店を切り盛りする後継者の山崎さんは東京の洋食店などで経験を積み、「地元の飲食店を盛り上げていけたら」と今年5月に地元陸別へUターン。秦さんのもとで働きがら一日でも早く師匠の味に近づけるよう、腕を磨いている。最長3年の任期後、店を継ぐ予定だ。ベテランから若者へバトンをつなぐ秦食堂の未来は明るい。
陸別町大通
Tel:0156・27・2048
営:11時~15時(そばがなくなり次第終了)
休:日曜
若き感性が光る、浦幌期待の後継者
かし和家
四代目店主の近江幹太さんはまだ23歳。97年続く同店を継承するきっかけは、先代の山岸嘉一さんと交流のあった近江家が店舗を買い取ったことだった。修業が始まると、来店した多くの客から感謝の言葉をもらい、継承する責任の重さを実感したという。
同店のそばは、クロレラを練りこんだ緑色の麺。つゆは創業から継ぎ足され、かし和家の命とも言えるかえしをかつお節2種とさば節のだしで割る。「先代の味を安定して提供しつつ、若い人も気軽に立ち寄れる店にしたい」と意気込む。まだまだ成長をみせる若き後継者の挑戦は始まったばかりだ。
浦幌町本町73
Tel:015・578・9080
営:11時~14時(LO15分前) 火・木・金・土曜17時~20時
休:日曜(月・水曜はランチのみ)
師匠である百姓(笑)庵の長崎さんに教わった技術と「お客さま第一、お客さまが師匠」という精神を糧に研さんを続けている坂本さん。「メニューも蕎麦打ちも未完成。スタッフに支えられながら日々修行です」と謙虚に話す
受け継いだ味に笑顔が集う
そば蔵大正(笑)庵
幕別町駒畠で農家の長崎勉さんがそば店をオープンしたのは2000年のこと。その名は百姓(笑)庵。十勝のそば文化をけん引したが19年に惜しまれつつ閉店。その流れをくむのが風光明媚(めいび)な大正時代の古民家で営む大正(笑)庵だ。
大正(笑)庵は02年にオープンし、15周年を区切りに一旦閉店したが、翌年、現店主の坂本仁さんが経営を引き継いだ。そば打ちは百姓(笑)庵で修業し、同店を営んでいた長崎さんを師と仰ぐ。中標津産キタワセを十割そばで提供し、強いコシと喉ごしの良さが特徴。店の名に恥じることのない、手間暇かけたそばを打ち続ける。
芽室町西士狩北5線25
Tel:0155・62・8833
営:11時~14時
休:月・火曜(祝日の場合は営業)
※フリーマガジン「Chai」2024年10月号より。
※撮影/辻博希、平栗玲香、清田千裕。写真の無断転用は禁じます。
そばのおいしい季節です
新そばが楽しみな時期がやって来ました。十勝は言わずと知れたそばの産地。さぁ、今日はどの店で「ずずっと」やりますか?