勝毎電子版ジャーナル

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内気な性格、“プレゼン”で克服 「勉強だけじゃない」を知って登校が楽に

十勝eスポーツ 教育センター

「不透光」不登校だった子どもたちの心を照らすプロジェクト

不透光(15)

狭い世界にいるより、広い世界にいたほうが幸せかもしれない。

 15回は、あまのさん(16)にお話を伺いました。

<あまの>
 高校2年生。中学2年生の頃に不登校を経験。勉強をひたすら頑張るタイプ。不登校中にインターネットを通じて様々な世界を知る。その影響で、勉強だけが全てではないと思うようになった。好きな食べ物はステーキ。


燃え尽き
 -不登校だったのはいつですか?
 中学2年から3年の終わりまで、1年間不登校でした。

 大量の勉強に集中したことで気持ちが燃え尽き、その反動で登校できなくなりました。

 安定した職に就くことを目標に、ひたすら勉強を頑張っていたけれど、学校のテストや評価のために勉強漬けの日々を送る中で燃え尽きてしまいました。

 一番得意な科目は国語でした。もともと本を読むのが好きだったので、国語だけは他の教科より勉強量が少なくても高得点をとれました。

家出した時のキャリーケース。


勉強以外の道
 -不登校の間は何をしていましたか?
 家にいた時は、趣味の動画編集をして過ごしました。

 ゲーム実況動画(しゃべりながらゲームをする様子を録画したもの)を作ったり、人に依頼された動画の編集をしたりしていました。

 -不登校の時、あなたから世界はどう見えていましたか?
 中学の大事な時期に、後先を何も考えず不登校になったことに不安がありました。

 周りに気を遣う性格だったので、家族に頼みごとができなくて、星槎高校のことも自分でネットを調べて入学しました。

 調べる過程でいろいろな情報に触れて、不登校になっても人生の選択肢は他にあると気づき、その安心感から勉強だけが全てではないと思うようになりました。

 星槎に入学してからは、勉強以外にプレゼンテーション活動を始めたことで、勉強だけではない学校生活を送れるようになりました。

家族と稚内に遊びに行った時の写真。これを機に外に遊びに行くことが多くなった。


 -当時、周囲の大人に訴えたかったことはありますか?
 不登校の人は僕以外にもたくさんいると思います。一度不登校になると、視界は真っ暗になって、やる気を削がれて何もできなくなるものです。子どもたちが見えづらい悩みや葛藤を抱えているということを、もっと知ってほしいです。

 そのような悩みや葛藤をすでに理解していると思っていたとしても、改めて見つめ直し、再認識することは大切だと思います。それを踏まえた上で、不登校の子どもたちと向き合ってほしいです。

反抗して、ものにあたってしまった時に、ドアにできた穴。


周囲と自分
 -当時の自分にかけてあげたい言葉を教えてください。
 過去の自分は、かなり周りに気を遣うタイプでした。どんな頼みも断れなくて、苦しんでいた時期があったから、「周りのことを気にせず、自分のことに集中してほしい」と言いたいです。

 -昔と比べて、今の自分は変化しましたか?
 不登校だった頃は自分から周囲に話しかけることがあまりなかったけれど、今は自分から話すことが増えました。そのおかげか、星槎高校では友達が以前よりも増えました。

 星槎高校に来てからはプレゼンテーション活動をするようにもなりました。自分から人に話しかけられるようになったのも、その影響が大きいです。

他にも、昔の動画編集の経験が今の活動にも活きていると思っています。

昔買ってもらったPC。今も使っている


 -お話も上手ですよね。
中学の頃にたくさん勉強をしたことと、国語が得意だったこと、不登校の間は動画編集をした経験や、ネットで知識を得たこと、星槎ではプレゼンテーションを経験して、積極的にコミュニケーションをしたこと。こういった経験が、周りを広い視野で見渡せて、話す力にもつながっていると自覚しています。

 何より、昔の自分を見つめ直し、自身のことを語るのは貴重な体験でした。今回はインタビューしていただきありがとうございました。

ずっと大事にしているスヌーピーのぬいぐるみ。


【取材を終えて】
 同級生が学校で勉強をしている間、みずきさんは家で動画編集の技術を磨いていたというエピソードは印象的でした。

 勉強から解放されて人生が良い方向に進むのは、珍しい例かもしれません。でも、視野を広げてさまざまな世界を知ることで、人生の幅が広がることは間違いないと感じました。

 プレゼンテーションは、以前取材したせいじさんも行っている活動です。自分の考えや好きなものを周囲に発表することは、コミュニケーション能力を養うのにはうってつけなのかもしれません。

 インタビュアーのけいぴーさんも、自分をレベルアップさせるために必要な存在があると、インタビューの中で語っていました。みずきさんにとってはそれが動画編集やプレゼンテーション活動だったようです。

 広い世界で選んだ選択が、今後の人生にも大きなプラスになると良いですね。

 今回の取材は以上です。全国の不登校問題に悩む人が幸せな日々を送れますように。最後までお読みいただきありがとうございました!

 ◇ ◇ ◇

書き手:ヤモマリオ(22)
中学2年の頃に不登校を経験、特別支援学級コースを経て中学校を卒業。対人恐怖症と解離性健忘症にかかり、卒業後から今日まで自宅療養中。社会復帰の実践的な試みとして、記事の執筆を担当。家ではずっとゲームをしている。ペンネームの由来は、ずっと家にいる「ヤモリ」とゲームから連想される名前の「マリオ」を掛け合わせたもの。

聞き手:けいぴー(18)
中学1年のころに先生との問題があり学校嫌いになった。不登校になる。中学2年からは特別支援学級に入る。中学3年の時にとある通信制高校のオープンスクールへ行き「すごく楽しいこんな世界があるんだ」と感じ、進路を決める。高校生になって友達がたくさん出来て、不自由なく幸せで楽しい日々をおくる。

記事企画:株式会社 十勝eスポーツ教育センター代表取締役 大橋紘一郎(34)
教育とeスポーツとまちづくり三本の柱で、子どもたちがやりたいことを実現するための環境づくりに取り組む。この「不透光」の企画が、不登校を経験している/してきた子どもたち、親・先生・親しい方々にとって、光を見つけるきっかけになることを願っています。電子版で大橋紘一郎を検索

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