十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

あっぱれ!十勝のあん(3)「農家への思い、あんパンに込めて 満寿屋商店」

艶やかな〈あんパン〉135円は、おやつや手土産として人気。十勝の水はパンづくりに適さないとされる超軟水だが、上手に使って甘みとモチモチとした食感をかなえている

 しっとりとした生地に、なめらかで風味豊かなあん。十勝っ子の代表的なおやつ、満寿屋商店の「あんパン」は、農家への思いから生まれた。

 作り始めたのは創業した1950年ごろ、初代・杉山健一さんだ。当時、客の多くは農家で、「農作業の合間に食べやすく、栄養価の高いものを」と試行錯誤した。あんパンは丸い形が一般的だが、生み出したのはコロンとした楕(だ)円形。畑の上でも、手で持ちやすいフォルムにこだわった。

 水分が多い甘めの生地は、あんと一緒に糖分がしっかり取れ、飲み物が手元にない農作業時でも、喉越しがいいようにという優しさから。「表面に切り込みがあるでしょう。焼くと適度にあんの水分が抜けて、口どけがよくなるんです」と話すのは、4代目の杉山雅則さん。今も当時と同じ形を守り続ける。

 現在、あんは音更の工場で毎日、炊き上げている。小豆はもちろん、小麦や酵母、水も十勝産。杉山さんは、「十勝の代表的な農産物を使ったあんパンから、農業の素晴らしさを感じてほしい」と力を込める。満寿屋商店と言えば、あんパンにとどまらず、今や十勝産食材100%のパンづくりの旗振り役でもある。農家のために―という先代の思いは、なお息づく。

麦音店ではあんパンのバリエーションが豊富。写真手前から時計回りに、〈枡(masu)~プレミアムあんチーズ〉330円、〈麦音あんパン〉130円、〈あん食パン〉300円、〈クリームチーズあんパン〉230円、〈十勝あんバター〉210円、〈麦音あんドーナツ〉140円、〈麦音おぐらパン〉130円 ※すべて税込み

あんぱんを販売しはじめた1950年創業当時、市内西1南9にて

現在もあんは自家製。自社で小豆を炊いて作っている

「農家さんには感謝しかない。十勝の農作物でおいしいパンを作り続けます」と社長の杉山雅則さん。一方で、多様な食生活の中で子どもたちの「あんこ離れ」を危惧。「十勝産小豆の食文化をつなぎたい」と願う


<満寿屋商店 麦音>
帯広市稲田町南8線西16-43
Tel:0155・67・4659
営:6時55分~18時30分
休:年末年始

※フリーマガジン「Chai」2021年11月号より。
※撮影/辻 博希。写真の無断転用は禁じます。

あっぱれ!十勝のあん

 十勝は小豆の一大産地。肥よくな大地で育まれた小豆から作るあんは、風味豊かで、十勝はもちろん、全国の和洋菓子店などで愛されています。さて、このあんが今、コロナ禍で需要が減っています。お膝元の十勝からその魅力を見つめ直し、おいしいあんをもっと楽しみませんか?あっぱれ、十勝のあん―。農家や菓子店の皆さん、そして十勝っ子が愛してやまない「あん」に贈る、応援企画です。
※掲載情報は2021年10月12日時点のものです。各店の営業状況は変更になる場合があります。事前にご確認ください。
※取材時のみ特別にマスクを外して撮影しています。

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