十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

おびひろ老舗湯めぐり(7)「温泉あれこれ豆知識」

 温泉には、独特の文化がある。当たり前に触れているモノにも、実は深いストーリーがあるかも!? 知識を深めて温泉をもっと楽しもう。

土産の定番、なぜまんじゅう?
 温泉地の定番土産と言えば「温泉まんじゅう」。群馬県の伊香保温泉が発祥地と言われている。明治43(1910)年、菓子店「勝月堂」の初代・半田勝三氏が、湯の花色を再現した「湯乃花まんじゅう」を考案したのが始まりで、その後、天皇家への献上品に選ばれて有名に。全国各地で「温泉まんじゅう」が売られるようになったそうだ。温泉の蒸気で蒸し、生地に温泉水を使うなど、独特の風味がいい。十勝らしい一品もあるので、ぜひご賞味を。

温泉水を加えた蒸気で手作りする「十勝川温泉第一ホテル」の温泉まんじゅう。十勝産100%のミネラル小豆やてん菜糖などを使い、つややかな琥珀(こはく)色はモール温泉のよう


温泉マークのルーツは?
 温泉マークは、地図で温泉や鉱泉を示す地図記号だ。一説では、群馬県安中市の磯部温泉がルーツとされている。万治4(1661)年、農民の土地争いに決着をつけるための評決文が江戸幕府から出され、その添付図に磯部温泉を記した温泉記号が2つ描かれていたそう。安中市には「発祥の地」の記念碑も存在する。おなじみのマークだが、2020年の東京五輪に向け、湯船に3人が浸かる国際規格の温泉マークと併存することになる。従来のものは、外国人には「温かい料理」に見える恐れがあるとか。お国変われば発想もさまざま。

おなじみの温泉マーク


地域性や時代を反映する、牛乳石鹸ののれん
 銭湯でよく見かけるのが「牛乳石鹼」と書かれたのれん。牛乳石鹼では、昭和30年頃からのれんを販促物として利用している。当時は銭湯が一番の社交場だったことから、宣伝効果を期待して作られたそう。のれんのサイズは北海道型、東京型、京都型、大阪型の4種類。東京ではのれんをサッとかきあげるのが粋とされているため、関西の1/2の丈というから面白い。最近は、イラストレーターによるアート性が高いのれんも登場している。
※提供・牛乳石鹼共進社株式会社

北海道型

京都型

大阪型
(1990年夏季 デザイン・加藤妙子氏) 


銭湯で牛乳を飲むのはなぜ?
 銭湯での定番ドリンクといえば、牛乳。風呂上がりに冷えた牛乳を喉に流し込めば、それだけでぜいたくな気分に浸れる。〝締めの牛乳〞が定番になったのは昭和30年代。まだ家庭に冷蔵庫が普及しておらず、銭湯を利用する人も多かったことから、牛乳屋が売り込んだことがきっかけだといわれる。水分補給はもちろんのこと、カルシウムが豊富で快眠効果も期待できる牛乳は、お休み前に飲むのが最適。いざ腰に手を当てて、ぐいっと!

リニューアルしつつも、懐かしさを醸す瓶牛乳。ちなみに成分の表示規制により、2001年から「コーヒー牛乳」という言葉は使用不可になった


参考:安中市、渋川伊香保温泉観光協会HP
参考文献:銭湯の謎(扶桑社)町田忍

※フリーマガジン「Chai」2018年5月号より。