いろいろアート(1)「新鋭の女性アーティスト」
山折り、谷折りを繰り返し生まれる神秘的なフォルム
ペーパーアート作家 加藤かおりさん
大きな紙をクルクル回転させて、いろいろな方向から次々と折り目を付けていく。いつの間にか折り目が三角形や六角形となり、幾何学模様を描いている。作品づくりの第一歩となる作業だ。設計図はない。「こんな形で、これぐらいの大きさにしようというのはありますが、経験と勘で折っていきます」と加藤さんは話し、地道に「山折り」「谷折り」を続ける。
インスピレーションを得るのは、オーロラや水の流れ、木の実、動植物など「自然現象」から。折り終わった紙を持とうとすると全体がバネのように伸び縮みして、生き物のようにも見えるのはそのためだろうか。作品が完成するのは展覧会場だ。折った紙を丸めたりして、思い描いた形をひたすら探す。「2度と同じフォルムはできないんですよ。だから思った形にするのが大変なんです」と笑顔を見せる。
展覧会への出展は国内にとどまらない。最近では、昨年9月にシカゴの日本領事館Japan information centerでのグループ展、今年9月には、バンクーバーで開かれるファッションウイークに出展する。このときは、加藤さんの紙のドレスをモデルが着て、ランウェーを歩く。ペーパーアートと出合い13年近くになるが、一つの作品を作っている途中で、次の作品の発想が頭に浮かび、創作意欲は尽きることはない。相棒の「紙」と苦しくも楽しい時間はまだまだ続く。
<profile>
旧忠類村(現幕別町忠類)出身。帯広北高在学中、オーストラリアに留学。授業で訪れた美術館のデザイナーの特別展で、新聞紙やチラシを折り、洋服が出来上がるまでの工程を表現した作品に出合った。紙でこんなことができるんだと衝撃を受け、ペーパーアートの魅力に取りつかれた。2010年にメルボルン大学院修士課程を修了。現在は帯広市内で創作活動を続けている。
しずくが生むミクロの芸術
写真家 浅井美紀さん
帯広在住の写真家・浅井美紀さんが見つめるのは、ミクロの世界だ。マクロレンズを通して表現する作品には、被写体への愛情にあふれ、女性らしい感性が光る。
「水滴写真家」と称される浅井さんの写真の数々は、自宅の庭の草花についた朝露から始まった。幼い頃から写真を見るのが好きで、2012年に念願の一眼レフを購入。レンズを通した朝露の輝きと水滴に映る世界に感動し、撮影にのめり込んだ。
“スタジオ”は、庭や近所の遊歩道だ。仕事がない休日を中心に、大掛かりなセットもなし。道具は水滴を垂らすスポイトなど、意外なほど身近でシンプルである。代名詞でもある水滴とアリを絡めた写真は、「かわいいでしょう? アリが水を飲む一瞬を7時間待ったこともあって」。普段は気に留めないアリも、レンズから見るとなんと表情豊かなのか。独自の撮影方法はもちろん、忍耐力や被写体への思いが作品ににじみ出るから、魅了されるのだ。
15年と17年には写真集を発表。十勝や札幌、東京で写真展を開き、ここ数年で環境が大きく変わった。「カメラを手にしたのは40代。何かを始めるのに遅すぎることはない」。頼もしい言葉が、心に響く。
<Profile>
帯広市生まれ。英国のカメラ雑誌「デジタルフォトマガジン」に作品が掲載され、米国のカレンダー会社「ブラッシュダンス」の16年度版のカレンダーに採用されるなど注目を集める。写真集は「幸せのしずくWorld of Water Drops」(扶桑社)と「しずく作品集&撮影テクニック」(玄光社MOOK)。
※フリーマガジン「Chai」2018年9月号より。
※写真/辻博希。写真の無断転用は禁じます。
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【特集】いろいろアート
身近なところで、いろいろなアートに触れられる十勝。意欲的に創作活動している作家、紅茶やコーヒー、スイーツで一息つき、気軽にアートを眺めるギャラリー。まちなかや足元にもアートがあふれています。
いろいろアート
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