十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

パンが好き。(5)「小麦と人をつなげるパン オドゥブレ十勝」

オドゥブレ(Eau de blé)は、「小麦の水」という意味。小麦の味を最大限生かすよう手ごね作り。17年には、地域活性化の取り組みを表彰するコンクール「わが村は美しく―北海道」で、同会が大賞に選ばれた

 「オドゥ ブレ十勝」と言われてピンとくる人は、なかなかの〝パン通〞である。十勝のパン職人が集まり、この春ようやく完成した「十勝パン」だからだ。

 手掛けたのは、パン職人や小麦者らで構成する「十勝パンを創る会」。小麦産地の特性を生かし、十勝産小麦100%のオリジナルパンを作ろうと、6年がかりで開発した。候補としてこれまで、長時間発酵パン「チャパタ」やナガイモを活用したパン、ホエー(乳清)を練り込んだもの、十勝産チーズからできた発酵種を使ったパンを発表。“オドゥ ブレ―”は、その“集大成”となる。

 十勝産小麦「キタノカオリ」を使用し、2012年に開発したチャパタがベース。小麦に対する水分量を高める製法を編み出し、みずみずしさが特徴だ。通常は水分60~70%のところ115%というからかなり高い。「ご飯のようなパンです」と同会の会長・中島将好さん(旭屋社長)。納豆にも合うというから、ユニークである。

「町村ごとに独自の小麦をひく動きが出るなど、活動は 広がりを見せています」と思いを語る会長の中島さん


 開発過程では、食用になりにくい小麦や、廃棄されがちなホエーなども素材に取り入れた。パン職人の技術向上はもちろん、異業種がつながることで、地域産物を磨き上げる機運が生まれた点も成果だろう。現在、会員は管内8店の店主や生産者ら23人。「東京五輪で世界中の訪日客に食べてもらうことも目標のひとつ」と中島さん。十勝への思いが詰まったパン。まずは私たちが愛し、広めるところから始めよう。

「オドゥ ブレ十勝」販売店
・旭屋(芽室)
・(有)林製パン工場・コルバ
・満寿屋 麦音
・ボヌールマスヤ(以上帯広)
・ちいさな街のパンやさん(浦幌)



<過去に発表した十勝パン>
2012年 チャパタ
小麦と水分量の割合を100%で開発


2013年 十勝長いもを使ったパン
十勝農業試験場からナガイモについて学び、ナガイモの品種「きたねばり」を混ぜた


2014年 完熟小麦パン
雨に遭い食用にしにくい「低アミロ」小麦を使用。生地を低温でゆっくり発酵させる技術を確立


2015年 ホエーパン
ホエーを活用。チーズのような風味で、乳由来のうま味が特徴


2016年 トカチーズ種
「十勝チーズモールウォッシュ」から作った発酵種を使用


※フリーマガジン「Chai」2018年10月号より。
※撮影/辰巳勲。写真の無断転用は禁じます。