2024年4月号

特集/ときめきのプリン&愛しのシュークリーム

十勝の“さしすせそ”(4)「せ 琥珀色のしょうゆににじむ たゆまぬチャレンジ精神」

商品づくりに取り組む、渋谷醸造のスタッフたち。発酵食品のおかげか、皆元気いっぱい

 地元産の素材で手づくりする、みそやしょうゆが評判の渋谷醸造。1933(昭和8)年の創業以来、伝統の味を守りつつ、新たな商品開発にも挑戦し続けている。道内で唯一、渋谷醸造だけで製造している珍しい品が〈白醤油〉。愛知県をはじめとする中部地方で親しまれる、コクが深い琥珀(こはく)色のしょうゆだ。

〈白醤油〉300㎖486円は火入れをしていないため、賞味期限は90日と短め。魚介メニューに合うほか、ホワイトソースの隠し味に使ってもおいしい


 「白しょうゆは魚介と相性が良いのに、魚が豊富に捕れる北海道ではつくられていない。『ならば自分で』、と思いまして」。代表の岡田清信さんは〈白醤油〉の誕生秘話を、こう振り返る。一般的なしょうゆが大豆を主原料にするのに対し、白しょうゆは小麦の配分が9割と高いのが特徴。十勝産小麦が持つ独特なうま味や色調を引き出すのに苦戦し、十勝圏地域食品加工技術センターの協力も得ながら研究を重ねた。そうして〈白醤油〉が完成したのは2008年。商品開発を始めてから、約2年を費やした自信作だ。

渋谷醸造の発酵食品は、地元食材の良さを引き出し、保存料は不使用。甘酒〈麹のめぐみ〉280円、〈十勝味噌キャラメルソース〉486円、〈手作りつゆ〉360㎖486円、〈麹発酵キャラメル〉540円など


 渋谷醸造の〈白醤油〉はまろやかなうま味が楽しめる上、薄い色付きなので食材の色を邪魔することもない。繊細な味わいや見た目が求められる和食店などで、重宝されているのだとか。「これからも、お客さまに喜んでもらえる商品を生み出していきたい」と、岡田さんは意気込む。

一般的なしょうゆは1年半ほど発酵させるが、白しょうゆは約1年で完成。小麦のタン パク質が発酵し、うま味成分が多いしょうゆに仕上がる


 近年開発した商品にはハスカップ風味の甘酒や、みそのキャラメルソースといったユニークなものも。型にはまらない自由な発想で、発酵食の可能性をますます広げている。

<渋谷醸造株式会社>
本別町共栄14-3 
Tel:0156・22・2077
営:8時~17時30分 休:日曜
http://sibuyajyozo.co.jp/
※商品の購入は店舗かインターネットで



※フリーマガジン「Chai」2018年11月号より。
※撮影/辻博希。写真の無断転用は禁じます。