個性いろいろ、十勝のワイン(2)「十勝のワイナリーめぐり~池田町ブドウ・ブドウ酒研究所、相澤ワイナリー」
02.池田町 池田町ブドウ・ブドウ酒研究所
ワインとともに歩む町づくり
池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、日本初の自治体によるワイナリーだ。「ワイン町長」として親しまれた故・丸谷金保氏が、農業振興を目指してブドウ栽培に着手したのがはじまりだった。1963(昭和38)年にはワイナリーを設立し、「ワインの町いけだ」のブランドを構築。今やワイン城は、町のシンボルになっている。
成功の鍵となったのが、独自で開発したブドウ品種。冬はマイナス20℃まで気温が下がる十勝の気候は、本来ブドウ栽培に向いていない。そこで丸谷氏は試験農場を開設し、品種改良に取り組んだ。最初にフランスで育成されたセイベル13053のクローン選抜により、赤ワイン品種「清見」が誕生。続いて寒さに強い山ブドウを掛け合わせ、「清舞」「山幸」を開発する。それらは十勝の気候・風土に合った独自品種として全国に知られ、個性あふれる十勝ワインの地位を確立した。
今年は瓶内二次発酵法で製造する〈ブルーム〉が発売40周年を迎え、その記念に町内限定の〈ブルームロゼ〉を発売した。そのほか、後志産ブドウを使った新シリーズのワインなど、魅力あふれる品を次々とリリースしている。積み重ねた技術とアイデアで、道産ワインの未来を切り開く。

新シリーズ「SHIRIBESHIVINEYARD SELECTION」。〈シャルドネ〉〈ソーヴィニヨン・ブラン〉各750ml 3,300円。〈ソーヴィニヨン・ブラン2024〉は、国内最大規模の「日本ワインコンクール」で銀賞に輝いた
池田町清見83-4
Tel:015・572・2467
営:9時~17時
休:年末年始 ※入館料無料
■購入できる場所/ワイン城ショッピングエリア、オンラインショップなど
shop
03.帯広市 相澤ワイナリー
無農薬栽培がもたらす深い味わい
農薬や化学肥料は一切使わず、自然の力を最大限に生かしたワインづくりを実践する相澤ワイナリー。ワインはすべて、ブドウの果皮や樹の幹などに元々ついている野生酵母で発酵。無ろ過、無清澄で瓶詰めし、酸化防止剤も最低限に。ブドウ本来の味わいがダイレクトに舌へ伝わってくる。
始まりは、代表の相澤一郎さんの父・龍也さんが不動産業の傍ら1998年から始めた山ブドウの栽培。山林を切り開き、大樹、幕別、帯広に持つ自社畑を一から耕した。畑周辺は今でも木々が生い茂り、「手作業の虫取りは大変だけど、益虫に助けられています」と相澤さんは自然の恵みに敬意を払う。
現在は8件の委託醸造を担い、アメリカやオランダなど海外に〈龍之介〉や〈さちろぜ〉などの自社ワインを輸出。国内外からも注目を集めているが、「まだまだ知名度が低い」と相澤さん。「帯広の街中にある自社畑で、ワインのイベントをして広めていけたら」とワインの可能性を模索する。
帯広市以平町西9線21-1
Tel:0155・63・7723
SHOP/10時~16時
休:不定
■購入できる場所:直営ショップ、オンラインショップなど
オンラインショップ
いくつ知ってる?
十勝のワイン用ブドウ品種
「ワインづくりはブドウづくりから」という思いを基に、十勝で始まったブドウ品種の開発。地元で栽培されているブドウを紹介します。
清見
セイベル13053のクローン選抜により誕生。冬季は土に埋めて寒さと乾燥から守る。清見でつくったワインは酸味と熟成香のバランスが良く、最も「十勝ワインらしい味」が楽しめる。
清舞
清見種と山ブドウを掛け合わせ、豊産性と耐寒性を高めている。ワインにするとプラムのような風味とフレッシュな酸味が現れ、深いコクも広がる。
山幸
清舞と同様、清見と山ブドウを交配。2020年、道内では初となる国際基準の品種として「国際ブドウ・ワイン機構(OIV)」に登録された。野趣味とパンチのある味わい。
未来/銀河
2022年に登録された、赤品種「未来」と白品種「銀河」。ドリームズ・カム・トゥルーの吉田美和さんが命名した。「未来」はスティル(非発泡)ワインに、「銀河」は酸味を生かしたスパークリングワイン用に栽培する予定。
皮付きのブドウをタンクに入れて発酵。その後圧搾機で皮と種を取り除く。さらに樽・タンクで熟成し、沈殿物を除去する「おり引き」を行う(樽熟成をしない作り方もある)。最後はろ過して瓶詰めへ。※醸造所により工程が変わります。
※フリーマガジン「Chai」2025年9月号より。
※撮影/辻博希、平栗玲香。写真の無断転用は禁じます。
個性いろいろ 十勝のワイン
管内で新しいワイナリーがオープンし、改めて十勝のワインに注目が集まっています。各施設の歴史や食事とのペアリングなど、飲んで応援したくなる、地元ワインの魅力をご紹介。