十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2025年7月号

特集/夏本番!旨辛メニュー

はじめよう、朝活(5)「カメラマン辻さんと巡る美しい広尾町の朝~黄金道路、フンベの滝、トーチカ群(豊似川河口付近)」

 Chai巻頭特集の撮影を長年担当している、カメラマンの辻博希さん。広尾町出身・辻さんの案内で早朝に撮影を行いました。

01 黄金道路 国道336号(広尾町~えりも町庶野)
 えりも町と広尾町を結ぶ、国道336号の通称。海の見える絶好のドライブルートとして知られる。莫大(ばくだい)な資金を費やして作られたことから、そう呼ばれるようになった。
問い合わせ:広尾町観光協会(Tel:01558・2・0177)

 写真家の朝は早いというイメージ。つまり早起きすれば良い写真が撮れる?そんな思い付きから始まったこの企画。周囲がまだ闇に包まれている午前3時、カメラマン・辻さんの案内で広尾町へ出発した。

 最初に目指したのは黄金道路。「トンネルにある柱の間から光が差し込むと、地面にできた影がストライプのように見えて、面白い写真が撮れる」と辻さん。王道の撮影場所と思いきや、穴場のスポットに期待が高まる。

黄金道路がストライプのように見える現象を別日に撮影。柱のすき間から光が差し込み、地面にくっきりとした影を作る


 移動中、辻さんに「カメラマンが早朝に撮影するのはなぜ?」という素朴な疑問をぶつけてみた。その理由は「朝は陽が低く、低位置から光が当たると立体的でメリハリのある写真が撮れる。動物が活動的になる時間でもあり、自然や風景を撮影するのに最適」とのこと。朝の撮影条件は、いいことづくめなのだ。

 取材日の日の出予想は、午前4時43分。その30分ほど前に、黄金道路へ到着した。「海から太陽が昇る瞬間が見られそう」と盛り上がったものの、水平線は分厚い雲に覆われており…。そんな状況の中でも、漁船が漂う印象的な風景を切り取った辻さん。「これもまた、雰囲気がありますね」。狙いとは違ったが、冷たく澄んだ空気を感じる早朝ならではの一枚を撮影できた。

辻さんが黄金道路付近から撮影した夜明け時の海。波の様子、朝日が反射した雲、漁船などを写し込み、刻々と変化する海の表情を多彩に表現した


02 フンベの滝 広尾町フンベ
 黄金道路からえりも方面へ向かう途中で道沿いに現れる。「フンベ」とはアイヌ語で鯨を意味し、かつてこの場所へ鯨が打ち上げられていたことに由来する。涼を呼ぶ夏の風景はもちろん、冬の氷瀑(ひょうばく)も迫力がある。

 続いて訪れたのはフンベの滝。晴れた日には、滝に虹がかかる風景なども期待できるが、残念ながら曇り空は続く。そこで辻さんが提案してくれたのが、気になる場所を狭く切り取る撮影法。初心者はつい滝の全景を入れようとするが、それではインパクトが薄れてしまう。


 また水が流れる様子はシャッタースピードを遅く設定して撮影するなど、個性的なショットにも挑戦した。人出が少ない早朝なら、自分のペースでさまざまなアイデアを試せる。

滝の水が落ちる狭い範囲にフォーカスした、神秘的な1枚。鮮やかな植物のグリーンが清々しい

シャッタースピードを遅く設定し、滝の流れを撮影。繊細な雰囲気に仕上がった


03 トーチカ群 豊似川河口付近 広尾町紋別16線3-1(地先)
 小型の防衛用陣地で、海岸線沿いに点在。道内各地の太平洋沿岸に建てられたという。当時は物資不足だったので、木製の枠にコンクリートを流し込んで作っている。浸食されながらも戦争の記憶を留める。

 最後に訪れたのは豊似川河口付近に広がるトーチカ群。兵士が敵から身を隠すための陣地で、太平洋戦争の末期、米軍の上陸に備えて建てられたという。「所有権があいまいなので、自治体でも十分な保存活動ができないそうです」と辻さん。そのはかなげな姿を撮影すると、異世界のような壮大な景色が現れた。


 6時頃には天気が回復し、空が青とオレンジ色のグラデーションに染まる。光を受けて輝く海面も美しく、早起きしたごほうびに思えた。まだ見ぬ景色と出合える〝朝撮〞の魅力に、少しだけ触れられた気がする。

遠くに広がる日高山脈と、砂浜にたたずむトーチカとの対比がユニーク。映画のワンシーンのようで迫力満点


<辻博希さん>
Profile
ロケーションフォトやニューボーンフォトが好評な「ブライダルココ」代表取締役。日本写真家協会正会員。Chaiの巻頭特集、連載ページの撮影を手掛ける。

辻博希さん


<ブライダルココ>
帯広市西6条南27丁目22-1 
Tel:0155・25・8743
営:10時~18時 
休:水・木曜



こちらもチェック!朝撮スポット
辻さんが過去に撮影した写真の中から、早朝に出掛けるのがおすすめの場所を紹介します

オンネトー 6月(初夏)に撮影

 
Point
 朝は風がなく湖面が「水鏡」の状態になりやすいので、初心者も挑戦しやすいです。真っ青な湖に木々が映り込む様子には、何度見ても心奪われます。晴天の日に撮影するのがベストですが、霧に包まれた幻想的な様子もきれいですよ。
足寄町茂足寄(足寄国有林内) Tel:0156・25・6131(あしょろ観光協会)

三国峠 9月(秋)に撮影


Point
 雲海が出やすい秋に三国峠を訪れました。望遠レンズで絵になりそうな場所を切り取ってみると光芒(こうぼう)が差し、水墨画のような雰囲気に。おなじみの場所も目新しい印象に撮影できました。緑深橋から撮影しています。
上士幌三股番外地 Tel:01564・7・7272(上士幌町観光協会)

※フリーマガジン「Chai」2025年6月号より。
※撮影/辻博希。写真の無断転用は禁じます。