十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年12月号

特集/新店でめぐる2024年

本日、肉気分(7)「ジビエを知りたい。~中村麻矢さん」

鹿の出没が多い早朝と夕方をめがけて猟にでる。鹿の足跡の向きや水浴びする“ぬた場”を探すなど少しの手がかりも見逃さない

 今注目を集めるジビエ。鹿が身近なこの土地で、ジビエに無関心ではいられない。鹿猟師らに思いを聞いた。

一人の猟師との出会いで狩猟の道へ
 広尾で活動する猟師の中村麻矢さんは、「おいしい鹿肉をたくさん食べたくて」、グルメ雑誌の編集者から猟師の道へ。「当時食べた中で最も感動した」という鹿肉を提供する宮城県の猟師、小野寺望さんに弟子入りし、猟との向き合い方を学んだ。その後、広尾で人生初の鹿を仕留めたのを機に移住を決心し、本格的に活動を始めた。

 なるべく鹿を苦しませず1発で仕留め、よりおいしく食べられるよう下処理をする。常に命と向き合う感覚を最も大事にしている。

 「今後は自分で捕った鹿肉と広尾の食材を掛け合わせたソーセージを作りたい」と意気込む。調理がしづらく余ってしまう前足をメインに、鹿肉と脂の比率を調整しながら試作を繰り返す。同町産の「星屑昆布」を入れるなどオリジナリティを出した一品を目指して模索中だ。

 現在はまだ安定的に鹿肉の一般販売はしていない。「広尾で授かった鹿肉を、おいしいと思ってもらえたらうれしい」と中村さんは今日も鹿との出合いを求めて山を奔走する。

自宅のいたるところに置かれた鹿の角や皮など。猟師免許取得のため、編集部時代に作った「狩猟のーと」は今でも大切に保管している

自分で仕留めた鹿肉を自宅で調理していただく。〈鹿タン〉はかみ応えと脂のノリがいい。十勝の塩と合わせてもおいしい

広尾の特産を作ろうと試作途中のソーセージ。理想の味を求めて、全国各地のソーセージなどの加工品を扱う場所を訪れる


インスタグラム mayamon78

中村麻矢さん


※フリーマガジン「Chai」2023年5月号より。
※撮影/神部葵。写真の無断転用は禁じます。