ココロ焦がれる十勝の焼き菓子(2)「焼き菓子から、気持ちを伝えるお手伝い」
米粉がベースのクッキー生地を、手で一つひとつ、丁寧に丸める。気が遠くなりそうな地道な作業に、「あいさつや日頃の感謝の気持ちを、大切な方へ伝えるお手伝いができれば…」と、一糸のパティシエ・堀貴志さんは目を細めながら手を動かした。
和のテイストを取り入れたスイーツは約30種あり、そのうちクッキーやパウンドケーキ、ビスコッティなど、約半数が焼き菓子だ。こだわりのひとつは、道産や地元の素材を使うこと。十勝産の小麦粉や卵といった安心できる素材を生かし、贈り物として選ばれるための「間違いないおいしさ」を追求する。
中でも手土産として人気が高いのが、米粉のクッキー〈小米雪〉である。ホロホロとした食感と、てんさい糖や黒糖、アーモンドプードルを素材とした優しい味わいはもちろん、自然や小動物などがモチーフのぬくもりあるパッケージ画が、贈る人の気持ちを代弁してくれる。「絵は四季ごとに変わります。他の焼き菓子にはオリジナルの熨斗(のし)も用意しています。一般的な熨斗だと手土産には少し硬いと思って」。贈り手に寄り添うちょっとした気配りが、心地いい。
店名には、「人と人とを想いでつなぐ、一本の糸になりますように―」という願いがこもる。「皆さんにおいしく食べてもらいたい。地域の食材を使って、これからもすてきな焼き菓子を作ります」と堀さん。思いが宿る焼き菓子を、今日も笑顔で送り出す。
<一糸(いと)>
幕別町札内中央町528-12
Tel 0155・66・7290
営:10時30分~18時
休:木曜、第2・4金曜(祝日の場合は営業)
【焼き菓子の仲間たち】
水分量が少なくて日持ちすることが特徴の焼き菓子は、材料さまざまな種類があります。和菓子もありますが、ここでは洋菓子のバリエーションをご紹介。違いを知って、おいしく楽しみましょう!
■サブレ
クッキーの一種。フランス語で「砂」sable(サブル)に由来する説もある。クッキーやビスケットよりもバターの風味が強く、サクサクした食感が特徴。
■ビスケット
イギリスから伝わった菓子。イギリスでは小麦粉で作った菓子を総称してビスケットと呼ぶ。日持ちを長くするために二度焼き、つまり一度焼いたパンをもう一度焼いたのが始まり。日本では小麦粉が主原料の焼き菓子で、糖分と脂分が40%未満のものをビスケットと言う。
■クッキー
アメリカでは日本でいうビスケットもクッキーと呼ぶ。外国においてはクッキーとビスケットとの明確な線引きはないが、日本では「糖分および脂肪分の合計が40%以上のもの」という定義がある。
■ラング・ド・シャ
サブレなどよりも卵白をたくさん使うため、全体的に水分量が多くなってパリッとした食感になる。薄くザラザラした食感と、本来の形は中央がくたびれた楕(だ)円であることから「猫の舌:langue de chat(ラングドシャ)」と呼ばれた。
■フィナンシェ
17世紀にフランスで誕生。卵白を泡立てたメレンゲとアーモンドプードル、焦がしバターを使用することで風味豊かで軽い食感。
■マドレーヌ
フランス生まれ。フィナンシェとの大きな違いは、全卵を使用することとアーモンドプードルを使わずレモンの皮など柑橘(かんきつ)が香る点。貝殻型の焼き型の上に生地を載せて焼くことが多い。
■パウンドケーキ
イギリス由来のバターケーキの一種。名前は卵、小麦粉、バター、砂糖の4つの材料を1ポンド(パウンド)ずつ使用して作っていたことから。
<監修:帯広洋菓子協会・水戸部公平会長>
※フリーマガジン「Chai」2021年5月号より。
※写真/辻博希。写真の無断転用は禁じます。
ココロ焦がれる十勝の焼き菓子
生クリームいっぱいのケーキもいいけれど、ついもう1個と手が伸びてしまう焼き菓子は、身近で心憎いスイーツ。ブレイクタイムのお供としてはもちろん、日持ちするので、遠くで暮らす大切な人への贈り物にもぴったり。お礼や感謝といったさまざまな気持ちを運んでくれるから、ますます好きになる。 サクッとしたクッキーやしっとりとしたフィナンシェ、艶めくカヌレまで。心を込めて作られ、誰かの心をいつも満たしてくれる、そんな十勝の焼き菓子にゾッコンです。