十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

読むたのしみ(10)「私の1冊(6)~いただきますカンパニー 代表取締役 井田芙美子さん」

<プロフィール>1980年、札幌市生まれ。幼少期には家にヒツジが丸ごと一頭届き、父が慣れた手つきでさばく姿が日常の光景だった。自らも生きた鶏を調理するなど、“食の原点に触れる環境”で育つ。帯広畜産大学進学のタイミングで十勝を居住地に。観光や農業を学び、さまざまなスキルを習得した後、十勝観光連盟に就職。2012年に独立。2児の母。

いただきますカンパニー 代表取締役 井田芙美子さん
 「子どもたちが安心して生きられる30年後をつくることが自分の使命」。その信念で起業を決意した。独立する前は団体職員としてフルタイム勤務、好きな業種で働く時間は学びも多かったが、子育てとの両立は大変だったと当時を振り返る。

 特に苦労したのは次女が生まれた時。自我が芽生え始めた長女とどう向き合うか。悪戦苦闘しながらの育児、心に余裕がなくなるのを感じた時、知人から薦められた本が『台所育児・一歳から包丁を』だった。タイトルを見て衝撃を受けたことは今でも覚えている。こんな小さな子どもに包丁を握らせる? まさか…。しかしページをめくるたび、どんな児育本にも書かれていなかった魔法の言葉がたくさんつづられていた。

 親はその子に合った道具をそっと用意するだけだ。可能性を信じ、できた時は「ありがとう」と伝える。できた喜びを繰り返すことで、いつしか自主性が芽生える。

「子育ては会社経営と似ている。スタッフがやってみたいと思った時こそがそチャンス。その気持ちを尊重し、苦手な部分は周りにいる得意な人がパズルのピースをはめるようにサポートすればよいだけ。この本が完璧主義だった私を変えてくれた、まさにバイブルです」と優しい口調で語る。今日も娘たちのとびきりの笑顔を見るために走り続ける。

「坂本廣子の台所育児・一歳から包丁を」
坂本廣子著
農村漁村文化協会1,267円(税別)

米をとぎ、野菜を切る。魚を焼き、だしをとる。いい香りを体いっぱいに感じる…。生きる力が身に付く「幼児厨房(ちゅうぼう)に入る」の勧め。子どもの手に合う包丁の選び方や火の扱いの教え方、ステップ式レシピなども掲載。


<いただきますカンパニー>
ガイドの説明を聞きながら普段入ることのできない畑を散歩する「農場ピクニック」や「手ぶら農業体験じゃがいも掘り」など、十勝を楽しく学べる観光向けツアープランを用意。また、企業研修・修学旅行・団体向けのツアーコーディネートも受け付け中(開催時期などは要確認)。

運営している指定管理施設「とかち大平原交流センター」
(帯広市川西町基線61-13)。
本社:帯広市西12条南29丁目2-5
Tel:0155・29・4821


※フリーマガジン「Chai」2020年11月号より。
※撮影/スタジオイッセイ(高橋一生)
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