十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

読むたのしみ(9)「私の1冊(5)~ノブキッチン 代表 栂安信子さん」

<プロフィール>長崎県出身。約25年前から、帯広市内の料理教室「ノブキッチン」を主宰。身近な食材で作れる家庭料理が人気を集める。8月からは「ノブキッチンカフェ」で料理の監修を担当。十勝管内の優れた食材を発掘して紹介する「とかち観光大使」としても活躍し、「農業応援隊アグリチアーズ」の一員・たべぷろライターとして情報発信を行う。

ノブキッチン 代表 栂安信子さん
 帯広市内で料理教室の講師として活躍する栂安信子さん。今年8月から複合交流施設「つがハウス」内のカフェで、食と健康を通じた地域貢献にも励む。提供する料理には、著名な料理家・辰巳芳子さんの教えが反映されているという。

 約15年前、栂安さんは、鎌倉で開かれていた辰巳さんの教室に月1回のペースで通っていた。それだけに本人のサインが入ったレシピ本『あなたのために』は、思い入れのある1冊だ。

 同書にはだしを生かした和のレシピから洋風のスープまで、辰巳さんの料理のノウハウが惜しげもなく披露されている。上品な文章でつづられた食の歴史や知恵から、温かな人柄も伝わる。

 栂安さんはボロボロになったページを、感慨深げに眺める。試作を重ねるうちに傷んでしまったという。「一番だしの取り方はシンプルながら、最も苦戦しました」と、懐かしむ。試行錯誤して極めただしは、栂安さんの料理に欠かせないものになっている。

 料理人として、食物アレルギーや嚥下(えんげ)障害といった、客の悩みと向き合う栂安さん。辰巳さんから教わった「相手を思って作る家庭料理」の大切さを、改めて実感している。「調理を工夫して、喜んでもらえた時は本当にうれしいですね」。師の教えを胸に、食の可能性と向き合う。

「あなたのために いのちを支えるスープ」
辰巳芳子著
文化出版局2,860円

離乳後から人生最期の時までいただける、滋味たっぷりの和洋のスープ。自身の介護体験と長年の研究に基づいて完成させた汁物のレシピを、美しく丁寧な文章で紹介する。手間暇かけて作る家庭料理としての「スープ」の奥深い魅力に触れられる。


<つがハウス>(ノブキッチンカフェ)
今年の8月にオープンした「つがハウス」は、「ノブキッチンカフェ」、栄養ケア・ステーション、福祉活動拠点が融合した複合交流施設。看護師や管理栄養士へ気軽に健康相談ができ、「離乳食教室」なども随時開催している。カフェでは一人一人の体調に配慮した予約制のランチ(2日前までに予約)や、ワッフルプレートなどを用意。

帯広市西9条南9丁目14-2
Tel:0155・67・1891 営:11時30分~17時
休:日曜・祝日 ※ランチは月・水・金曜


※フリーマガジン「Chai」2020年11月号より。
※撮影/スタジオイッセイ(高橋一生)
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