2024年4月号

特集/ときめきのプリン&愛しのシュークリーム

読むたのしみ(8)「私の1冊(4)~ザ・本屋さん 代表取締役 髙橋智信さん」

<プロフィール>1980年、幕別町生まれ。帯広農業高校卒業後は札幌の短大に進学。就職して営業職を経験したのち十勝へ帰郷した。実家である同社の副社長をへて5年前、父の跡を継いで代表取締役に就任。現在、十勝管内に4店と室蘭に1店の全5店舗を構える。本好きな兄と妹を持つ。幼少期、両親に初めて読んでもらった絵本は今でも忘れられない思い出。

ザ・本屋さん 代表取締役 髙橋智信さん
 読書を極めたくても、何を読んだらいいのか。餅は餅屋という通り、本で悩んだら本屋に聞くのが最善。その道のプロ、髙橋智信さんに本を読む楽しさや選ぶコツを尋ねてみた。

 「まずは手に取った本をパラパラとめくり、目に留まったページをじっくり読んでみる。決まりなんてない、最初から最後まで欲張って読むのをやめるだけでも違うはず」。

 書店の息子として本に囲まれて育ち、数々の名作を愛読してきただろうと思いきや、実は当時あまり本が好きではなかったと笑う。本格的に読書を始めたのは実家を継ぐと決めた年、今まで縁遠かったその世界にはまっていった。そんな時出合った『国家の品格』は、気になる言葉を見つけては付箋を貼り、繰り返し読むたびに違った視点でまた楽しめる。

 特に正しい日本語やはっきりとした四季、日本には美しいものであふれているという内容に感銘を受けた。進学を機に十勝を離れた際、改めて地元愛に気付いたタイミングで巡り合った一冊。そこから得たものは形として反映され、店内の至る所に十勝産のカラマツを使用し、優しい香りは森林浴のようだ。

 「読書に大事なのはちょっとした時間にパッと読める環境と気持ち。たくさんの言葉が詰まった本はまさに心の薬。気軽に本の扉を開けてほしい」と願っている。

「国家の品格」
藤原正彦著
新潮新書、680円(税別)

「倫理」と「合理性」頼みの「改革」では社会の荒廃を食い止めることはできない。今、日本に必要なのは論理より情緒、英語より国語、民主主義より武士道精神と表現する。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的提言。


<ザ・本屋さん>
155坪という広大な売り場には約12万冊(コミックだけでも約3万冊)の書籍や知育玩具、人気の文具がずらりと並ぶ。タイトルや表紙を全て隠し、書店員が読んで感じた紹介文だけを貼って本を販売するイベント「シークレットブック」は年4回実施。お薦めする15冊を選び、毎回1カ月半の期間で開催している。

ダイイチ白樺店内のコロニー店
本部:帯広市西11条南1丁目11
Tel:0155・58・5991


※フリーマガジン「Chai」2020年11月号より。
※撮影/スタジオイッセイ(高橋一生)
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