十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

読むたのしみ(7)「私の1冊(3)~ぷれいおん・とかち 理事長 今村江穂さん」

<プロフィール>1967年、福岡県生まれ。愛知県の大学を卒業後、就職を期に北海道へ。結婚して長女を出産した5年後、夫の転勤により帯広に居住地を移す。慣れない土地での子育てを充実させるため、「帯広西おやこ劇場」(のちの「ぷれいおん・とかち」)に親子で参加。3人の子育てをしながら運営にも携わり、14年前に理事長に就任。

ぷれいおん・とかち 理事長 今村江穂さん
 「育児本」と呼ばれる書物はごまんとある。子育て論やアドバイスがつづられ、どの本にも良さがある。その中で、読書を習慣とする今村さんが帯広に転居したばかりの時に出合ったのが、『子どもへまなざし』という一冊だ。

 300ページ以上あり、「完読できるだろうか?」と不安になったが、かわいい挿絵に一目ぼれした。挿絵を描いたのは「ぐりとぐら」でおなじみの山脇百合子氏。だが、この本の魅力はそれだけではない。児童精神科医でもあった佐々木正美氏の優しく語りかける文章、決して上から押しつけるわけではない育児法に引き込まれていった。

 当時、自身も6歳と2歳の子育て真っ最中で「愛情深く子どもに寄り添い、周囲の人たちに助けを求めながら子育てをしていきたい」という著者の思いに深く共感した。「誰でも初めから完璧な親になれるわけではない。周囲に支えられ、自身も親として育っていけるということを広く伝えたい」と語る。

 思いやりを持った子どもに育てるためには、まず親自身が思いやりのある言動を示すこと。そのためには、人とのつながりや心が満たされていることが大切―。改めて読み返し自らが実践するモットーは、この本からの教えであることに気付く。出版から20 年の時を経ても色あせない科学的な子育て論に胸が熱くなった。

「子どもへのまなざし」
佐々木正美著
福音館書店、1,785円

子どもにとって乳幼児期は、人間の基礎を作る最も重要な時期。そして子どもたちを健やかに育てることは、大人自身も大切に生きることにつながる。児童精神科医の著者が臨床経験を踏まえて乳幼児期の育児の大切さを語る。


<ぷれいおん・とかち>
「子育ち・親育ち」の拠点として、さまざまな年齢の親子の幅広い活動をサポート。多世代が緩やかにつながり合いながら、楽しみつつ子育てができる場を提供する。次世代に輪をつなげることがモットー。良質なおもちゃや絵本が並び、施設内で週2回開設するプレイセンター「にじっこ」からは、親子の元気な笑い声が聞こえる。

帯広市西20条南5丁目18-2
Tel:0155・36・0560


※フリーマガジン「Chai」2020年11月号より。
※撮影/スタジオイッセイ(高橋一生)
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