十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

読むたのしみ(6)「私の1冊(2)~クランベリー 代表取締役 水戸部公平さん」

<プロフィール>1972年、帯広市生まれ。白樺学園卒業後、札幌にある商業系大学へ進学し経営学を専攻。卒業後はさまざまな視点から菓子業界の現場に関わることを熱望し、仙台の有名洋菓子店で販売スタッフとして4年間勤務した。家族からの呼びかけをきっかけに帰郷。後にクランベリーの取締役に就任、今年で10年目となる。

クランベリー 代表取締役 水戸部公平さん
 「書物で学ぶより目で見て実践したいタイプだったので、正直、若い頃に読書をしたという記憶があまりなく…。そんな自分が何度も読みたくなる本に出合えているとは、昔の私が知ったら驚くでしょうね」。

 そう話す水戸部社長のかけがえのない本とは、20歳の時に父から贈られた松下幸之助の著作。クランベリー(創業当初はアンルセン)の先代である父は、職人気質で多くを語る人ではない。本を手渡された時も、特に交わした言葉はなかった。当時大学生だった水戸部さん。わざわざ時間を作って本を読むという習慣はなかったが、「せっかく父がくれたから」とページを開いていく。

 筆者の松下氏といえば、経営の神様と呼ばれた人物。経営者としての心構えや生き方など、そこに書かれた言葉は家業を継ぐ自分にとって刺激的だった。読み終わる頃、父がなぜこの本を選んだのか分かった気がした。「言いたいことはここに書いてある」。それが口数の少ない父からのメッセージなのだろう。

 あれから20年以上経った今でも、読み返すことがある。経営者として忘れてはいけない大事な何かを思い出すために。読み終わった時には、決まって新鮮な気持ちをもたらしてくれる。付箋でいっぱいになった愛読書は、同店の3代目を目指す大学生の息子へ受け継がれる予定だ。

「経営のコツ ここなりと気づいた価値は百万両」
松下幸之助著
PHP文庫、476円

何事にもコツというものがあり、コツをつかみさえすれば物事は驚くほど順調に進む。企業経営もまた例外ではない―。松下幸之助が会得した“経営のコツ”“商売のコツ”を自らの経験を通して語る、経営者へのメッセージ。


<クランベリー>
十勝管内に全5店舗を構える、1 9 7 2 年創業の老舗洋菓子店。看板商品のスイートポテトをはじめ、十勝産の小麦や餡を使用した焼き菓子などを取り扱う。通常スイートポテトは1 本単位の販売だが、カフェスペースでは1 人分にカットしたスイートポテトが好きなドリンクと味わえる。地方発送も可能。

クランベリー弥生通り店
帯広市西9条南29丁目
Tel:0155・49・3670


※フリーマガジン「Chai」2020年11月号より。
※撮影/スタジオイッセイ(高橋一生)
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