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トンガで野菜栽培指導に尽力 元シニア海外ボランティア武田さん現地を思う

松田 亜弓

十勝毎日新聞社 編集局メディアコンテンツ部

 海底火山の噴火と津波に襲われた南太平洋の島国トンガ。元帯広市職員の武田順二さん(66)=市内大正町=はJICA(国際協力機構)のシニア海外ボランティアとして、現地で野菜栽培指導に尽力した経験がある。共に日常生活を過ごした住民の顔を思い返し、「心配で仕方がない。津波や火山活動の危険性はあまり聞いたことがなく、まさかトンガがこんなことになるとは」と心を痛めている。(松田亜弓)

 武田さんは福岡県出身で、帯広畜産大卒。道の農業改良普及員を経て、帯広市農政部時代にはJICAの外国人研修員に農業を指導するなど活躍した。経験を生かし、2015年4月から1年2カ月、トンガでボランティアを務めた。

被害の全容が見えないトンガの被災を心配する武田さん

武田さんから野菜栽培を教わる女性たち(武田さん提供)


 現地では野菜を食べる習慣がなく、肥満や糖尿病が多い住民の健康向上を目指し、有機栽培の家庭菜園づくりなどを伝えた。北海道、十勝で培った知識や技術をトンガの人々の食生活改善に役立てた。

 そんな武田さんが今回の災害で最も懸念しているのは水の供給だ。現地ではホームタンクに雨水をためて飲用やトイレなど全てをまかなうが、噴火で大量の火山灰が島を覆ったため、「火山灰の硫黄が入り、使用に適さないのでは」とする。日本からは航空自衛隊が飲料水を22日に届ける予定で対応が急がれる。

 1部の離島では全家屋が失われ、首都ヌクアロファのあるトンガタプ島でも150軒が損壊し、島民が避難との情報がある。現地の多くの家屋はトタンと木材で造られ、災害には弱い。温暖な気候を生かした造りだが「津波には耐えられないだろう。首都の中心地は標高も低い」と心配する。

トンガの最も都会的な市街地を歩く現地の人々(武田さん提供)


 島内は至る所に高台避難を呼び掛ける津波注意の標識があったが、火山噴火や津波に対する危機意識は高くはなかった。1年を通して穏やかな気候で、治安も夜間に出歩くなどしなければ問題はない。報じられる被災状況に驚くばかりで、「トンガには産業がなく、経済は観光業のほか、外国に出稼ぎにいった住民の仕送りが大きい。新たな住居を建てるにもお金がないだろうし、今後の支援が大切だと思う」と話す。

市街地にはブタやニワトリが闊歩し、一部は週末に食肉処理され食卓に並ぶ(武田さん提供)


 農業面では火山灰が作物に付着する被害も判明している。加えて、今後の営農への影響も懸念される。現地の土はサンゴ礁でできているためアルカリ性で、酸性の火山灰は適度であれば土壌改良になるが、土を起こすトラクターなどはないため、バランスが悪くなり中長期的な作物への影響が考えられる。

 現地住民は親日的で、「日本人だと分かると笑顔を見せてくれる」。ラグビーで来日する留学生も多く、武田さんは日本代表として活躍する選手の両親に会ったことを思い返す。東日本大震災では義援金のほか、「トンガより愛を込めて」と被災者支援の里芋などを日本に送っている。そんなトンガの一刻も早い復旧復興を願い、「遠い小さな国だが、少しでも身近に感じ、関心を持ってほしい」と望んでいる。

十勝で培った知識や技術を生かした武田さんと歓迎したトンガの人々(武田さん提供)


 トンガへの支援はユニセフ「自然災害緊急募金」(https://www.unicef.or.jp/news/2022/0005.html)、日本財団「トンガ救援基金」(https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2022/20220119-66778.html)などが行っている。

【トンガ】
 南太平洋に位置する島国。人口10・8万人。大小170余りの島々で構成され、首都ヌクアロファがあるトンガタプには総人口約70%の約7万5000人が住んでいる。皇室外交などを通じた親日国。JICAによると、海外居住のトンガ人からの海外送金に依存する経済構造。東日本大震災ではトンガ赤十字社から1千153万円、トンガ政府・市民から約900万円、その他食料が支援された。

【トンガの海底火山噴火】
 日本時間の15日午後1時10分ごろ、トンガの首都ヌクアロファから北約60キロの海底火山「フンガトンガ・フンガハアパイ」が噴火した。人工衛星の画像分析によると、噴煙は半径約260キロに広がった。また津波は高さが最大15メートルに達したとされている。

 トンガの政府によると、これまでに外国人や離島の住民ら3人の死亡が発表されている。被災地の通信状況は悪く、安否確認は難航している。火山灰の影響で、外国政府による救援物資輸送も難航している。

 噴火の影響で、約8000キロ離れた日本でも、15日夜から16日にかけて、鹿児島県奄美市で1・2メートル、岩手県久慈市で1・1メートルなどの津波を観測。気象庁は鹿児島県の奄美群島・トカラ列島と岩手県に津波警報、十勝沿岸を含む太平洋側に津波注意報を発令した。

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