本を探しに。(5)「十勝19市町村の図書館司書に聞く<人生を変えた一冊>&知ろう<わが町本>(2)」
<鹿追町図書館>
山口悠人さんの一冊
「屍人荘の殺人」今村昌弘(著)東京創元社
書店でふと表紙に目をひかれ読み始めました。当時、活字本から少し足が遠のいていた私を小説の世界へと引き戻した一冊です。読了後も高揚が収まらず、同種の感動を味わえる作品に出合うべく書店に足しげく通いました。
<士幌町したしみ図書館>
伊藤麻衣子さんの一冊
「パーラ(上)」ラルフ・イーザウ(著)あすなろ書房
小学生の頃に何度もページをいったりきたりして苦戦しながら読んだ作品で、言葉をテーマにしたファンタジーです。詩的な表現の魅力と言葉遊びが詰め込まれていて、読書って楽しい!と感じるきっかけになりました。
<清水町図書館>
村越亜里紗さんの一冊
「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」五味太郎(著)偕成社
歯医者が怖いワニ、患者のワニが怖い歯医者のふたりが、同じ場面で同じ言葉を口にして展開する物語に、子どもながら斬新さに衝撃を受けました。他者の立場になり考えること、発想の転換についても教えてくれた絵本です。
<新得町図書館>
奥山広子さんの一冊
「太陽の子」灰谷健次郎(著)KADOKAWA
「知らなくてはならないことを、知らないで過ごしてしまうような勇気のない人間に、わたしはなりたくありません」小学校高学年の頃に読んで衝撃を受けた本です。主人公ふうちゃんと自分を比べ、私も、わからなくてもずっと考える人でありたいと思うようになりました。
<大樹町図書館>
花本早知乃さんの一冊
「エルマーのぼうけん」ルース・スタイルス・ガネット(著)福音館書店
小学生の時に読書好きの先生が読み聞かせてくれました。自分では手に取らない素朴な本。そこから広がる色鮮やかな世界に夢中になりました。本を読む楽しみだけではなく、本を見つける楽しみも教えてくれた一冊です。
<豊頃町図書館>
小田桐桜さんの一冊
「ばんえい競馬 砂の軌跡」太田宏昭(著)小学館
私が短大1年生の時、この本に出合い、馬は私の学びや趣味の一部となりました。卒業論文でも「馬と人との関わり」を題材にしました。今でも帯広競馬場に行き、ばん馬の勇ましい走り姿や大きい体からあふれ出る愛嬌などを見たりと、馬は私の生活に欠かせない存在になっています。
<中札内村図書館>
稲守涼花さんの一冊
「彩雲国物語」雪乃紗衣(著)角川書店
小学生のときに出合ったこの本から、夢に向かって頑張る姿勢や仕事への向き合い方などを学びました。自分の立場に甘えず、どんなときも誰かのために駆け回る主人公が大好きで、何度も読み返しています。
<広尾町立図書館>
梶谷遥さんの一冊
「スマホ脳」アンデシュ・ハンセン(著)新潮社
ある日スマホの使用時間を見ると、こんなに使っていたのか…と驚いたことがあります。そんな時、この本を手に取りました。1日にスマホを使用する時間を決め生活するようになり、時間の使い方を見直すきっかけになりました。
<本別町図書館>
木村彩乃さんの一冊
「西の魔女が死んだ」梨木香歩(著)楡出版
初めて読んだ小学生のとき、衝撃が胸にしみてしばらく動けなかったことを思い出します。自分で決めること。直感で決めつけないこと。周りに目を向けてみること。全部、この本から教わったことです。
<幕別町図書館>
西川美羽さんの一冊
「永遠の0」百田尚樹(著)太田出版
普段は気付かない当たり前のことが誰かの努力によるもので、自分の努力も誰かの当たり前につながることを教えてくれた作品です。今の生活がさまざまな人の努力の積み重ねであることを戦争というテーマから気付かされます。
<芽室町図書館>
宮井美歩さんの一冊
「ミリー・モリー・マンデーのおはなし」
ジョイスLブリスリー/作 上条由美子/訳 菊池恭子/絵 福音館書店
小さいころ繰り返し読んでいました。文章のリズムと挿絵が好きで、本は面白いんだ、と思えた原点です。本を好きでなければ今の職業を選ぶこともなかったので、人生を変えた、は大げさですがきっかけといえる一冊です。
<陸別町公民館図書室>
角谷尚子さんの一冊
「深夜特急」沢木耕太郎(著)新潮社
世界にはさまざまな人・場所が存在するのだと感じました。文章もまるでその場所の映像が思い浮かぶかのようです。当時の国々の状況や歴史なども知ることができます。私が英語を学び、世界を見たいと思った本です。
※フリーマガジン「Chai」2022年11月号より。
本を探しに
本は宝物だ。読書をすればその世界に没頭し、感動や新しい知見、技術を発見する。宝物たる本が眠る書店や図書館はまさに迷宮。入るだけでワクワクがあふれ出す。財宝のような、輝く一冊を探す冒険に出かけよう。