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広がる「非対面」サービス コロナで変わる宅配の形

小林 祐己

JICAグアテマラ事務所企画調査員

 「配達やセールスでマスクを着けない人が来るのが怖い」。十勝毎日新聞の読者情報窓口「かちまい投稿ポスト」にメールが届いた。新型コロナウイルスの感染拡大で「3密(密集、密閉、密接)」の回避が叫ばれる中、業務上、人と接触する機会の多い配達業はどんな対策を取っているのか。調べると、住人と接触しない「非対面」のサービスが広がっている現状が分かった。
(塩原真、小林祐己)

◆マスクなし訪問に「恐怖」
 「セールスマン、宅配業者、郵便局員の方々が家に来るのですが、マスクを着けてこない人がたくさんいます。わが家には持病持ちの家族もいるのでとても恐怖です」。芽室町内の男性は感染リスクへの不安をメールにつづった。

 配達業務に携わる人のマスク着用など、感染防止の取り組みはどうなっているのだろうか。宅配業者と郵便局に聞いてみた。

◆マスクは「励行」
 「今般マスクの入手が困難であることから、着用を義務づけるのでなく、励行としている」。マスク着用の有無を聞いた日本郵便の回答によると、郵便の配達スタッフは必ずしも全員がマスクを着けているとは言えないようだ。

 大手宅配業者のヤマト運輸でもマスク着用は義務でなく、「推奨」という。取材した担当者は「やはり全員が必ず着けているかと言われると…」と話した。

 日本郵便はマスク購入の予算を立て、全国の支社で購入することにしているが、マスクの品薄のため、「励行」にしているという。全員分を毎日必ず確保することは難しいのだろう。

 両社とも配達員の出勤前の健康状態確認や手洗い、咳エチケットの徹底などの他、「会議・出張の原則自粛」「不特定多数が参加する催しへの参加自粛」(日本郵便)など会社を挙げて感染対策を取る。それでも、荷物や手紙を受け取る住民の不安は増している現状がある。

◆「受け取りたくない」
 「対面で荷物を受け取りたくない」。ヤマト運輸には感染拡大が始まった2月から、全国でこんな声が寄せられ始めた。住民の不安を受けて同社などが始め、現在拡大しているのが「非対面の受け取り」だ。

 同社ではセールスドライバー(配達員)が受け取り人の家を訪問した際、インターホン等で「非対面」の希望があれば、自宅の玄関前など指定の場所に荷物を置くサービスを始めた。受領印やサインは省略し、配達票に非対面配達の旨を書くことで代えている。

 当初は2月下旬から「特別対応」として現場で始めたが、3月から取り組みを公開している。同社は「配達は基本は対面と考えている」とあくまでコロナ対策の限定サービスとするが、感染拡大とともに「要望は広くある」という。

 ただ、ネット小売り大手のアマゾンなどが行う、在宅・不在に関わらずに荷物を指定場所に届ける「置き配」とは異なり、不在時には対応しない。電話での「置き」指定はできないという訳だ。

 日本郵便も3月9日から「非対面」の受け取りを始め、緊急事態宣言を受けて4月8日からは宣言の対象となった7都府県で、ゆうパックや書留郵便物の配達で希望を確認して郵便受けや玄関前に配達する「置き配サービス」を導入。「積極的なご案内を実施し、感染防止策としている」としている。

注文のあった家の玄関先にピザを置く配達スタッフ(ピザハット帯広西店)

◆ピザも玄関に
 「非対面」の配達は荷物だけでなく、飲食にも広がりを見せている。配達ピザチェーン「日本ピザハット」は3月12日から、全国で手渡しせずにピザが受け取れる「置きピザ」のサービスを開始した。

 以前からあった、在宅時の服装などを気にする客の「配達員と直接顔を合わせずピザを受け取りたい」という要望に加え、新型コロナウイルス感染の広がりを受け、人との接触回避を考慮してサービスを始めた。

 開始以降、全国的にはデリバリー件数の約1割が置きピザを利用。帯広市内の「ピザハット帯広西店」(西19南5、柳谷淳一店長)でも日に日に利用件数が増えているという。

インターホン越しに場所を指定する「置き配」

 サービスはピザハット公式サイトおよびスマホアプリで購入した場合のみで利用可能。キャッシュレス決済した人が置きピザを選択できる。配達員がインターホン越しにピザの置き場所を確認。指定の場所に置き終わるとそのまま立ち去る。

 同店ではテイクアウトの来店客にも距離を程度保って待つように呼びかけるなど感染防止に配慮する。柳谷店長は「置きピザでお客さまに少しでも安心・安全を感じてもらえたら」と話している。

 長引く外出自粛でストレスがたまる中、マスクの着用を含め、他人との接触に敏感になりがちだが、自宅を訪れるのが仕事の配達業の現場ではさまざまな工夫で不安軽減に努めている。テレワークの拡大など社会のあり方に影響を与えているコロナウイルスの感染拡大。収束した後の社会では、配達の形は「非対面」が主流になっているかもしれない。

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