私はアルコール過敏症 新型コロナ対策の消毒に困惑~増える化学物質過敏症(6)
新型コロナウイルスの感染予防対策として使われているスプレー式のアルコール消毒液。公共施設や企業などで使用が拡大している一方で、成分のエタノールが皮膚に付いたり、揮発したものを吸い込んだりして体調不良を起こす人がいる。音更町に住む40代女性も(アルコール過敏症の)一人。今月初旬、商業施設で店員からアルコール消毒を強く勧められ、苦痛を味わったという。女性は「感染症予防にアルコール消毒は必要だと思う。しかし、体質で使えない人もいることを分かってほしい」と強く求めている。
(デジタル編集部=塩原真)
女性は3月初旬、いつも利用している商業施設に行くと、大勢の客でにぎわっていた。混雑している入り口を進むと、店員が待ち構えたようにプッシュ式の消毒液を客に手に掛けようとしていた。
「ちょっとまってください」。女性は身構えたが、店員は「えっ」と想定外だったような表情をみせた。すぐさま、「身を守るためですから」と言われ、アルコール消毒液をスプレーされそうになったが寸前で断った。周りにいた客数人のいぶかしそうな視線を感じた。
その後、店員から衛生用の手袋を渡され店内に入ったが、必要な商品をかごに入れる以外は両手を胸の前に縮込めていた。手早く買い物を済ませ店を後にしたが、入り口付近で吸い込んだエタノール臭で気持ち悪くなり、吐き気を感じた。「一緒にいた夫がいなければ、なにも対処できなかったかもしれない」と不安をのぞかせる。
アルコール過敏はエタノールに触れた皮膚にかゆみや発疹などが現われる。揮発したエタノールを吸い込むことで体調不良や場合によっては呼吸困難に陥ることもあるという。
新型コロナウイルスの感染予防策が注目されるに従って、全国的にもアルコール過敏を持った人が声を上げている。ツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)では、「『この人はなんで店に消毒しないで入っちゃうの?』的な目で見られることもあります・・」と周りの人の目を気にする声や「消毒使えないアルコールアレルギーの人は新型コロナ対策どうすれば」と困惑のコメントが書かれている。
女性の場合は元々、全く酒が飲めない体質だった。働き始めた20代のころ、少しでも酒を口にするだけで吐いてしまい、アルコールに弱い体質だと分かった。それ以降気をつけ生活していたが、食品に入っている少量の酒成分で体調を崩すこともあったという。皮膚に触れるだけでも、かゆみが伴い、やむを得ずアルコール消毒をしなければならない時には手袋をはめていた。
現在、女性はアルコール消毒ができない分、入店時に手を洗い、対策を講じている。また、買い物中も手で顔を触れないようにしたり、必要なもの以外は手に取らないようにしたりと配慮しているという。
「アルコール消毒以外にも予防対策があることを分かってほしい。むしろ、アルコール消毒が“万能”と思い、他に何もしない人のほうが不安だ」と訴えた。
※アルコール過敏について広く伝えるため「増える化学物質過敏症」の特集として掲載しています。