山レポート
「十勝越え」歩く 松浦武四郎の足跡
ルート最高地点のルゥチシ峠。緩やかな台地状で快適に進む。後方に見えるのは富良野岳 【上富良野・富良野】北海道の名付け親で、蝦夷地(北海道)を6度探査した松浦武四郎(1818~88年)。中でも高所が続いた、旭川から十勝へ至る「十勝越え」ルートの一部をたどる「トカチルゥチシ伝承堅雪フットパス」(トカチルゥチシを歩く会=山谷圭司代表=主催)が9日、十勝岳連峰の富良野岳周辺で行われた。
「十勝越え」150年を機に山谷さんが同会を設立して始まり、10回目を迎えた。毎年、陸上自衛隊の許可を得て、上富良野演習場の敷地内を出発地点としている。富良野岳と前富良野岳の鞍部(ルゥチシ峠、1359メートル)を通り、原始ケ原(富良野市)に抜ける14キロのルート。「ルゥチシは武四郎が北海道で踏んだ最も高い場所」(山谷さん)だという。
標高が上がると気温が下がり、降っていた雨が凍りつく 参加者はスノーシューを履き、締まった春の雪斜面を軽快に登った。ルゥチシへの最後の急斜面を登り切ると、純白の秀峰・富良野岳と前富良野岳に挟まれるように平たん地が広がった。朝から不安定だった天候も回復し、青空が広がった。南東方向を見ると、はるか遠くに十勝との境界が望め、参加者の足取りも軽くなった。下山時には山谷さんから、武四郎の十勝越えのエピソードなどについて講義もあった。
岩見沢市から参加した公務員の藤原千也さん(38)は「峠を越え、十勝側から湧いてきた雲が龍神の雲のようで興奮した」と話していた。(塩原真)