何かに悩んでいる人にかける言葉が見つからないとき、黙って差し出せる本があるといいなと思う。そういうときの本は、できるだけ押しつけがましくなく、読みやすくて、誰が読んでもねじれて伝わることのないまっすぐな本がいい。エッジィで複雑な物語を好む私は、そうした本をそう多くは知らないけれど、家族の「普通」に悩む人がいたとしたら、私は『今夜すきやきだよ』（新潮社）をそっと手渡すだろう。

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