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25年前の紙面が縁結ぶ 本紙「私の赤ちゃん」で隣に載った大泉拓途さん、沙綾さん

披露宴で笑顔でケーキに入刀する拓途さんと沙綾さん(長尾悦郎通信員撮影)

 帯広市の自衛官大泉拓途さん(25)と会社員の沙綾さん(26)=旧姓・加藤=が23日、市内で結婚式を挙げた。2人の縁の始まりは25年近く前に載った十勝毎日新聞の人気コーナー「私の赤ちゃん」。同じ日の記事に並んで載った2人が、偶然の出会いを重ね、引き寄せられるように結婚した。披露宴で華燭(かしょく)に照らされた2人は「いまだに信じられない。記事があったからこそ生まれた縁だった」とほほ笑んだ。(北村里沙)

 運命の糸が紡がれ始めたのは1999年2月22日。それぞれの家庭で新聞を開いた2人の母親、大泉雅美さん(49)と加藤文恵さん(51)は喜んだ。「私の赤ちゃん」に子どもの顔があった。「載るのを心待ちにしていた。すぐに切り取って成長アルバムに挟んだ」と応募した文恵さんは振り返る。

1999年2月22日付の「私の赤ちゃん」に載った拓途さんと沙綾さん


妹に同じ名前
 一方、我が子の隣で笑う赤ちゃんに目を引かれたのが雅美さんだった。「沙綾。なんてかわいい名前なんだろう。もし娘が生まれたら同じ名前を付けよう」。実際に2年後、長女が生まれると「大泉沙綾」と名付けた。

 それから約3年後のある日。清水町の温泉に訪れていた加藤さん家族は、「さあや」と呼ぶ声が耳に留まった。当時はまだ珍しかった名前で、「同じ名前なんですか」と話しかけると、大泉さん一家だった。同じ日の新聞に載ったと話が盛り上がったが、当時は携帯電話も普及しておらず、連絡先は交換しなかった。

 それでも約15年後、運命の神様は2人を再び引き合わせた。高校3年生の秋、沙綾さんがアルバイトしていた北海道ホテルに、同じ結婚式の給仕係として短期で拓途さんが入り、1日だけシフトが重なった。

 自分の記事をアルバムに入れて飾り、家族で「昔たまたま会った」「妹さんが同じ名前だった」と話題にしてきた沙綾さんは、すれ違いざまに拓途さんの胸元のネームを見てぴんときた。「新聞に一緒に載った人かも」と思わず話しかけた。「妹の名前の由来になった人がいる」と聞いていた拓途さんもはっとした。

 互いの顔を知った2人は、2年後の成人式でも再会、一緒に写真を撮った。「ちゃんと知りたい」との思いを募らせていた拓途さんが、インスタグラムでつながっていた沙綾さんを食事に誘った。

 2022年10月8日に交際を始め、自衛官で別海で勤務していた拓途さんが土日、帯広に通い、実家が農家の沙綾さんとナガイモ掘りをしたり、ドライブをしたりして、愛を育んだ。「前からいるような感じで、気を使いすぎることもなかった。結婚するんだろうなと思っていた」という拓途さんがプロポーズし、今年5月4日に届けを出した。

 23日、思い出の北海道ホテルで挙式と披露宴が執り行われた。沙綾さんは「私たちが出会った場所。絶対ここがよかった」と話す。

 ホテル内の教会で開かれた結婚式で、拓途さんは父の聡さん(49)、雅美さんと力強く握手。沙綾さんは、父の佳紀さん(53)と一緒に入場した。妹の大泉沙綾さん(23)と沙綾さんの弟の稜也さん(22)が指輪を運んで手渡した。披露宴は約160人が出席し、2人の縁に驚きながら祝福した。

 「結ばれる運命の2人だったのかな」。晴れ姿の息子を見て雅美さんは感慨深げ。文恵さんは「縁と偶然が、重なって、重なって、今日の日を迎えたという感じ」と目を潤ませた。

「形に残る記事あったから」
 沙綾さんは話す。「会っただけでは記憶は薄れていたかもしれない。記事という形に残るものがあったから、それを何度も見てきたから、あの時、ぴんときたんです」。色が変わって黄色くなった新聞の切り抜きは、今もアルバムに大切に挟んである。

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