出発前に会社の同僚から「南極にパスポートは必要なの?」と言われたことがある。もちろん返答は「必要」だ。「しらせ」に乗船する日本の観測隊員の場合、必ずオーストラリアに入国するからだ。しかし、南極は領土権の主張が凍結されている場所。南極に上陸する時は、パスポートは必要ない。必要なものは環境省が認める「南極地域活動行為者証」くらいだろうか。
やっと復路も終わりに近づき24日朝にはオーストラリアのシドニーに到着する。22日のミーティングでは入国カードの記入を行った。記入欄にあるどこの国から来たのかという問いに「ANTARCTICA(南極)」と書くように指示された。もちろん南極は国ではない。
昨年12月初めにオーストラリアを出国して4か月間どこの国にも行かず、再度オーストラリアに入国する。状況だけなら家族が捜索届けを出している。それだけでも日常生活では考えられない体験だろう。