十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

十勝の“さしすせそ”(8)「し 地場産のしおを 十勝産しお創りプロジェクト」

17年に非直火式低温製法で作ったしお。粒が大きく、さながら「金平糖」のよう

 十勝産の「しお」を作ろう―。管内で唯一生産されていない主要調味料のしお。製塩事業確立を目指して「十勝産しお創りプロジェクト」のメンバーが地道な活動を続けている。

 プロジェクトは、加工食品の付加価値を高めようと、帯広や広尾、大樹の産業界を中心に2014年に発足した。15 年度までは国の補助事業を活用。現在はメンバーの有志で研究している。

 初年度は、十勝沿岸の海水約400ℓを煮詰めたしおづくりに挑戦。直径約2mの鍋底に表れたしおのインパクトは、今も記憶に残る。その後、製塩の本場・北陸地方の視察や試食会などで可能性を模索。16年には事業主が決まり、大きく前進した。

 製塩方法は、約70℃の湯せんで海水を蒸発させる「非直火式低温製法」だ。主成分の塩化ナトリウムより先に結晶化するカルシウムを除去でき、その後水分と一緒に苦み成分のマグネシウムを飛ばすことも可。つまりミネラルの含め方が自在で、「オーダーメードのしおづくりです」と事務局の帯広信用金庫地域経済振興部佐藤憲副部長。「苦みがい
らない」「サラサラがいい」といったユーザーの要望が通るという。

14年8月、初めて挑戦したしおづくり。11時間かけ、約10㎏のしおを取り出した


 事業主に手を挙げたのはメンバーの石山拓さん(広尾町)だ。同町豊似の酪農家と協力し、バイオガス発電プラントの排熱を使った製塩工場を町内に造る。CO2排出ゼロで環境にも配慮する。

16年2月の試食の様子。十勝産のしおを使った焼きそばの他、パンやたらこを食べ比べた


 パンやチーズなど、他の原料がすべて地元でもしおがそうでないため、「十勝産100%」とうたえない加工品は多いという。石山さんは「しおは十勝ブランドを確固たるものにする。多くの人に喜んでほしい」。十勝の食産業に〝革命〞が起こる日は近そうだ。

<十勝産しお創り プロジェクト事務局>
Tel:0155・23・7590
(帯広信用金庫地域経済振興部内)

「広尾の昆布を使ったしおもいいね」と夢を語る石山さん。プロジェクト発足前、広尾の海水を煮詰めたしおを使った地サイダー「広尾しおサイダー」を考案した一人でもある

広尾の豊かな海が源。海水のろ過設備を備えた、広尾漁協うに種苗生産施設がある音調津からの取水を予定


※フリーマガジン「Chai」2018年11月号より。
※撮影/辻博希。写真の無断転用は禁じます。