北海道遺産「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」
上士幌市街地を国道273号に沿ってさらに走り、元小屋ダムの手前から十勝三股までの間には、コンクリート橋を含め50もの橋梁(きょうりょう)群が今も残る。1987年に廃線となった旧国鉄士幌線で使われていた。コンクリート製のアーチ橋は道内でも初期に造られ、歴史的価値も高いという。
旧国鉄士幌線は帯広駅から十勝三股(上士幌町)駅まで全線76キロあった。1925年に帯広~士幌間が開通し、39年に十勝三股までつながった。人を運ぶだけではなく、木材や農産物を運搬する役割を担い、地域の経済発展に大きく寄与した。
しかし、60年代に入り、糠平から三国峠までの国道の整備が始まる。追うように車社会が到来、人や物は車やトラックでの移動が主流に。士幌線の廃止は、同時にアーチ橋の使命の終わりも意味した。
野ざらしのままだった橋梁群が再び注目されたのは、廃線から10年後。上士幌町は、所管する国鉄清算事業団に一括取得か撤去かを迫られた。町民有志が保存を求める運動を展開、町や事業団を動かし、取得・保存につながった。2001年には、“昭和初期に十勝内陸の産業開発を目指して建設された第1級の鉄道遺産”として北海道遺産に登録された。