2024年4月号

特集/ときめきのプリン&愛しのシュークリーム

ぼくの新店めぐり~ぷりっとジューシー「極上厚切り」 ヒゲ面オヤジの牛タン居酒屋

 帯広市東1南9に3月19日、牛タンと地鶏を味わえる居酒屋GYUTAN19(ぎゅうたんいっきゅう)がオープンした。スキンヘッドにヒゲ面ながらさわやかな笑顔の店長、中本秀二さん(46)は「おいしい牛タンとお酒を楽しんで」と呼びかける。

店イチオシは希少部位「タン元」
 店の看板メニューは、「サシが入って柔らかい肉質」と店長が太鼓判を押す「極上厚切り牛タン」(2680円)。牛一頭から200グラムほどしか取れないタン元を炭焼きした一品だ。ぷりっとしたタンの食感を残しつつも脂がのって柔らかく、自家製のネギ塩だれが味わいを深める。

 「あんまり注文されないけど隠れたおすすめメニュー」と言うのが、タンの付け根からわずかに取れる「たんスジ」(1190円)だ。弾力ある歯ごたえと肉のうまみを感じられる品だが「名前になじみがないのか注文が少なくて、『たんサガリ』に名前を変えようかな」と笑って話す。

 店の2枚看板である新得地鶏は「外で伸び伸びと育った鶏だから、他とは違うおいしさがある」と中本店長。牛タンと地鶏に合う酒を求めて市内の酒店を回り、集めた日本酒は30種にものぼる。「好みのお酒を飲み比べながら見つけてもらえたら」

店イチオシの「極上厚切り牛タン」


自衛隊から料理人に
 中本さんは航空自衛官だった父の背中を追うように航空自衛隊へ入り、沖縄へ配属された。しかし30歳を迎える頃に、レールが決まった人生への物足りなさを感じて退職。沖縄そばを中心とするフードコートの店で働き、沖縄料理や中華など幅広い料理に触れた。

 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が東北を襲った。宮城県に住む自衛隊時代の先輩のことが気になり、6月に宮城県へ。車を走らせ海岸沿いに出た瞬間、中本さんは言葉を失った。想像を絶する惨状に素通りすることができず、先輩にあいさつして旅に出る予定を変更し、1週間宮城に滞在してがれき撤去に取り組んだという。

 その後は「リゾートバイト」を利用して、全国各地の宿で働きながら料理の腕を磨く。2年ほど各地を転々とした後、居酒屋など展開する会社へ就職して帯広の店舗に勤め、21年に独立して現店舗の前身となる牛タン炭焼き専門店「しらかば茶寮」を市内に開いた。

笑顔で厨房に立つ中本さん


文字通り「自ら作った」新店舗
 昨年12月に店を閉め、移転してGYUTAN19として再出発した。黒を基調とした和モダンな店内には半個室3部屋とカウンター4席があり、子ども連れまで幅広く利用できるようにと、掘りごたつ席も設けた。開店費用を抑えるため、壁からテーブルまでほとんどの内装を、半年かけてDIYで改装している。「手をかけた分、店には愛着があるねえ」

黒を基調とした和モダンなテーブル席

家族や高齢客から人気の掘りごたつ席


 再出発に際してランチ営業から夜営業に変えた理由を「朝が早くてつらかったから」と中本さんは笑う。昼には注文制で弁当の提供も考えており、毎日午前1時まで営業しているため体力的に不安もあるが「まとまった数なら頑張れるかな。まずはご相談を」と話した。

 夜にふらっと、おいしいお酒と厚切り牛タンはいかが?

店舗は東1条通り沿い


<中本秀二(なかもと・しゅうじ)>
1976年生まれ。父が転勤族だった関係で各地を転々とし、高校卒業後は航空自衛隊に入隊。居酒屋やホテルなどで料理の腕を磨き、今年3月に店をオープン。「やれる限りはやっていく」と張り切る、日本酒好きな46歳。

<GYUTAN19(ぎゅうたんいっきゅう)>
帯広市東1条南9丁目10、18時~翌1時、不定休、電話080・3296・2919。予約は電話の他、インスタグラム(@gyutan19)のダイレクトメールでも受け付けている。

お酒の締めにぴったりの「豚骨ラーメン」も