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2校の休日活動はすべて“地域” 白岡市は生徒のニーズを形に~新時代の部活2部(1)

大海 雪乃

十勝毎日新聞社 編集局 コンテンツグループ

 埼玉県東部に位置し、水田や梨園が広がる人口5万人の白岡市。部活動の地域移行のモデル地域として2021年から動き出し、昨秋から市内4校のうち南中学校と菁莪(せいが)中学校の2校で休日の部活動を地域クラブ活動とし、地域指導者が担っている。来年度には残りの2校も移行する予定だ。生徒や教員など当事者の声を生かし、民間と連携して取り組んでいる白岡市を取材した。

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JR白岡駅から車で7分ほどの菁莪中学校


 夏休みの土曜日の午前、35度を超える猛暑の中、菁莪中のテニスコートではソフトテニス部の部員がボールを打ち合っているが、他に人の気配はない。校舎内の電気は消えており、市教委の担当者は「今日は休日なので先生方は誰も来ていません。部活があった時は、せっかく来たからと仕事をして帰る先生もいましたが、それがなくなり時間外勤務は間違いなく減りました」と説明する。

 都心へ通勤する人のベッドタウンとして住宅地の整備が進み、人口が微増する白岡市。4校に50の部活動(運動部35、文化部15)がある。生徒数は学校によって偏りがあり、菁莪中では1年生が1クラスとなった。教員数が限られる中、生徒らの部活動の選択肢を狭めないための環境を整える必要性が高まっていた。


◆説明重ね希望を調査
 県は21年度、地域移行のモデル事業の参加希望自治体を募り、白岡市の市長と教育長が率先して取り組む姿勢を示し機会を捉えた。まずは勉強会や説明会、各校長との話し合いなどに着手。教職員向け説明会は学校ごとに計4回、生徒向けは部活動ごとに計10回、保護者向けは計6回などと回数を重ねた。さらに県・市職員や議員、教職員らが参加するフォーラムや現地視察会も行い、理解を深めた。

 市教委や地域のスポーツクラブ関係者などで構成する地域部活動企画委員会を21年度に発足。最初に中学校の部活動の実態把握や課題を洗い出し、地域移行に向けた希望を知るため、1・2年生と保護者、教職員を対象にアンケートを実施した。 

 「1週間当たりの活動時間(平日4日各2時間、休日1日各3時間)をどう感じるか」や「地域の専門家による指導を受けたいか」などを調査。この中で、国のガイドラインでは平日と休日に少なくとも1日ずつの休養日を設定するように示されているが、「平日3日、休日2日」の活動希望も多かった。こうした声を反映させて、「中学校部活動と地域部活動を合算して1週間のうち2日分以上を休養日とする」など、活動に関する市独自のガイドラインを策定した。

 教職員の3人に1人は休日の指導を望んでいないことも明らかになった。市教委教育指導課の小林大輔参事(49)は移行に伴い、「ベテランの教員などから『自分たちから部活動を奪うのか』と抵抗もあるかと思ったが、ほとんどなかった。今後移行する2校の教員からも『休日は指導を遠慮したい』という声が聞かれる」と話す。

白岡市の地域移行を担当する市教委の小林参事


◆民間ノウハウ活用し体制確立
 21年度、市教委はPTAのOBを中心として地域部活動のために発足した組織に管理・運営を委託した。学校とつながりが密接で地域との連携を取りやすかった。しかし、初年度は限られた数の部活動で実証導入したが、最終的に4校すべての休日の活動に規模を広げる上で、事務的な手続きや金銭面の扱いなどが難しくなり、「うまくいかなかった」(小林参事)という。次の段階に進めるにあたり、22年度からはスポーツを通じた地域課題解決を手掛けるスポーツデータバンク(東京)に運営を委託し、市内2校の希望する部活動で移行した。

 同社は全国40以上の自治体で地域移行の制度設計から伴走的に支援。地域指導者の募集や育成、人材バンクや財源確保の仕組みの設計などを地域の関係者と連携して行い、指導者への研修や運営費・謝金管理なども行っている。白岡市も指導者が人材バンク「白岡市ペアーズバンク」に登録する仕組みで、市内の人材だけではなく、近隣から元実業団チーム選手や元プロ選手なども協力している。

 石塚大輔社長(41)は「将来的にはコーディネーターを地域の人や地域に根付いている人がやるのが理想。我々がスタートの側面支援をしながら、ノウハウは地域に移植して、いい意味で関係性が薄くなることを目指している」と話す。

(スポーツデータバンクの資料を参考に作成)


◆ダンスとプログラミングの地域クラブ新設
 23年度は菁莪中のソフトテニス、バスケットボール、卓球部、南中のソフトボール、陸上、ソフトテニス、卓球で休日の活動を地域に移行した。剣道と吹奏楽は4校合同の地域クラブとし、吹奏楽部はパート別で練習している。部活動改革の中でただ地域にスライドするだけではなく、新たな価値を付けようと、生徒へのアンケートで「やってみたい部活動」の上位だったダンスとプログラミングで4校合同の地域クラブを立ち上げた。月2、3回の活動を外部指導者が指導しており、小林参事は「新たな人間関係が築かれたり、3年間補欠で試合に出られなかった生徒が活躍できたりする可能性があり、ニーズは高い」と話す。(大海雪乃)

4校合同のプログラミングの地域クラブの様子(スポーツデータバンク提供)


4校合同のダンスの地域クラブ活動の様子(スポーツデータバンク提供)

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