十勝毎日新聞電子版
Chaiでじ

2024年11月号

特集/レトロかわいい十勝

ぼくの新店めぐり~癒やしの自家焙煎「サワラコーヒー」

 帯広市西21南2の住宅街にひっそりと建つカフェ「サワラコーヒー」。2021年から店は持たずにイベントなどで出店していたカフェが8月11日に店を構えた。レコードの流れる店内で、オーナーの小笠原慶さん(32)は「コーヒーの香りでほっと一息ついてくれたら」と、自家焙煎したコーヒーを振る舞う。

豊富な知識でコーヒー選びをサポート
 ハンドドリップでコーヒーを入れる小笠原さんの手元を見ていると、コーヒーの種類ごとに入れ方が異なる。「これは香りを立たせるために回して入れるけど、こっちは膨らみやすいから回すと雑味が出る」。尋ねると丁寧に解説してくれた。

 「コーヒーになるチェリーの果実を残して乾燥させたナチュラルは果実感がある。水で果肉を洗い落として発酵させたウォッシュドはすっきりとした飲み口」。焙煎方法も「浅煎りは苦みが少なく、フルーティーで酸味がある。深煎りは果実の香りが薄れるが、苦みが出てくる」。

 コーヒー豆の格付けなどができるアラビカ種コーヒー豆鑑定士の国際資格を持っており、客が好みの味を伝えると選び方のヒントをくれる。訪れた客は、精製方法や焙煎による違いを尋ねながらコーヒー選びを楽しんだ。

お湯を注ぐ小笠原さん。注ぎ方など質問すると丁寧に答えてくれる


疲れ癒やした豊かな香り
 コーヒーとの出合いは6年前。大学院を卒業後、派遣社員として大手自動車メーカーで自動車部品の機械設計を手がけていた小笠原さんは、厳しい会社の工程管理に苦しんでいた。過酷な業務に加えて派遣という肩身の狭さもあり、ストレスは限界だった。

 そんなとき、趣味の音楽でライブハウスを訪れ、ひと休みしようと近くにあった自家焙煎コーヒーを提供するカフェに入った。その店で「香りに救われた」と回顧する。それまでコーヒーが特別好きではなかったが、芳醇(ほうじゅん)な香りが疲れ果てていた体を癒やした。コーヒーの魅力に気づいた瞬間だった。

テーブル席は1卓。自家焙煎豆やドリップバッグも販売する


 気づいたころには会社を辞め、コーヒーの専門学校に通っていた。半年かけて抽出や焙煎を学んだのち、2018年に帯広へ帰郷。それから2年間は父が経営していた牧場を手伝いながらコーヒーの勉強に取り組んだ。コーヒー鑑定士の資格を取得した後の21年3月から、「サワラコーヒー」としてイベントなどで出店している。

「ホットケーキは修業中」だそう


多くの人に安らぎを
 鑑定士としての知識を生かして、「本当にいい素材で作ったコーヒーを提供できる」。当初は「消費者の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしいおいしさであり、消費者がおいしいと評価して満足するコーヒー」と定義されるスペシャルティにこだわり、本来の果実感を楽しめる浅煎りを提供していた。

 しかし店舗を構えるに当たって原点に立ち返ったとき、「香りに救われたことを思い出した。自分の趣味ではなく、多くの人に安らぎを提供したい」と、スペシャルティや浅煎りへのこだわりは置いてきた。近く新しい焙煎機を導入し、深煎りコーヒーの提供も可能にしていく。

カウンターは5席。コーヒーを入れる様子を間近で眺められる


 現在、店は週4日の営業で日曜には各地のイベントに出店している。午前11時に店を開けるが、「需要があればモーニングもやりたい」。客のニーズに業態も合わせていく考えだ。「多くの人に安らぎを」という小笠原さんの思いが表れる。

カフェラテはおしゃれなグラスで提供される


 コーヒーは店内やテークアウトで味わえる他、店頭やオンラインショップで豆の購入もできる。パッケージには例えば「チョコ、ベリー、なめらかな質感と長い余韻」など、味わいの特徴が書かれており、はじめての人でも選びやすい。

 自分好みの一杯を探しに出かけてみてはいかが?

自家焙煎の店は「年を重ねるごとに香りが増していく。うちはまだまだ」と小笠原さん


<小笠原慶(おがさわら・けい)>
1990年、帯広市生まれ。帯広柏小、帯六中、帯柏葉高、工学院大卒。修士号を取得し、都内で自動車部品の機械設計に携わっていたが2018年に帯広へ帰郷。21年からサワラコーヒーとしてイベントなどでコーヒーを振る舞い、今年8月に店を構えた。趣味は音楽で、所属するロックバンドではドラムを担当するも、ギターに憧れる32歳。CQI認定Qアラビカグレーダー(アラビカ種コーヒー豆鑑定士)、コーヒーインストラクター2級。

<サワラコーヒー>
帯広市西21南2ノ42
営:午前11時~午後7時、日・月・火曜定休
駐車場あり
https://sawaracoffee.com/