ぼくの新店めぐり~十勝を味わう夏の涼「かき氷と雑貨のお店 ペレ」
音更町木野西通19、木のおもちゃと子ども服を販売する「Purka(プルカ)」内に間借りした店舗。7月17日にオープンした「かき氷と雑貨のお店 Pele(ペレ)」だ。店を切り盛りする音更町地域おこし協力隊の高山茉実さん(26)は、「ちょっと高いけど、おいしいかき氷を食べて欲しい」と、自慢のかき氷を提供する。(文・柳田輝、写真・sayakaさん提供)
十勝の食材でかき氷を
メニューはかき氷3種(各890円)といちごミルク(600円)。おすすめの「いちご練乳かき氷」は、町内の辻野農園が生産する香り高く濃厚な味わいの「とかち雫いちご」と十勝産の甜菜糖のみで作ったシロップをぜいたくに使用した一品だ。
「とかち雫いちご」は鮮やかな赤が特徴で、素材由来の色合いのソースが楽しめる。他のメニューにも十勝産や音更産の食材を多く使用している。氷は長時間かけて製氷される純氷を薄くスライスし、ふわふわとした食感が喜ばれる。食べ進めると中には生クリームが入っており、途中から違った味わいと食感を楽しめるのも魅力。
「好き」を集めたお店
今年度いっぱいでの地域おこし協力隊卒業を前に「起業してみたい」との思いを抱いた高山さん。その最初の一歩として店を開いた。かき氷を選んだ理由は「ふわふわのかき氷が好きだけど、十勝ではあまり食べられず、作るしかないと思った」から。
かき氷は高山さんにとっては夏の食べ物と言うよりスイーツの一つという認識のようで「どうしてかき氷か。うーん……私にとってはパフェやプリンと同じようなものなんです」と笑顔で話した。
店では趣味で製作する手作り雑貨も販売する。シマエナガやエゾリス、エゾモモンンガなどの十勝に生息する動物を羊毛など用いて作った。石田めん羊牧場(足寄町)や十勝牧場(音更町)など、十勝産の羊毛を主に使用する。
ペレという店名は1912年に出版された絵本「ペレのあたらしいふく」(エルサ・ベスコフ著)の主人公の名前から取った。男の子が羊や近所の人たちの協力を得て、羊毛から服を作る話で、「ペレという響きと、欲しいものを1から作るというストーリーが好き」と高山さんは話す。
都会に疲れ、十勝に癒やされ
日高管内日高町出身の高山さんは地域おこし協力隊員として音更町に移住するまでは愛知県内の出版社で働いていた。激務に耐えながら3年間勤めたが、体調を崩し「田舎で暮らしたい」と北海道へ帰ることを決めた。
地域おこし協力隊の存在を知り、観光発信であればスキルを生かせると隊員の道を選んだ。音更町に決めた理由は「田舎のイメージだったから」と笑う。しかし実際に来てみると、予想を覆す町の活気。「めっちゃ都会じゃん」
愛知県に住んでいた頃に人の嫌なところをたくさん見てきたという高山さん。移住した当初は人間不信になっていたが、今では「また人が好きになった。田舎じゃないけど」。協力隊を卒業後も音更町に定住する予定だ。「ご飯がおいしいし、いい人ばかり」
忙しい中にも楽しさを
趣味は小学生の頃からやってきた手芸。羊毛雑貨の他、ぬいぐるみなども製作する。「外には絶対出たくない」とインドア生活を好むが、理想のライフスタイルは自給自足だと言い、郊外での暮らしや家庭菜園に憧れている。
毎日定時に出勤する生活が苦手で「自分のペースで働きたい」と言いつつ、平日は役場に出勤、土曜はクナウパブリッシングなどが主催する十勝ファーマーズマーケットに出店、日曜はペレで営業と、休みなく働く。
理想とのギャップが垣間見えるが、生き生きと仕事や生活の話をする。「結構、頑張ってやってますよ」と苦笑した。忙しい生活の中の安らぎは空いた時間の手芸と、愛犬コテツ(雌、8歳)と遊ぶこと。コテツは昨年5月に引き取った保護犬で、雌だがコテツと名付けた理由は「響きが好きだから」とにっこり。
冬営業は未定、まずは夏
現在は日曜日だけの間借り営業だが、ゆくゆくは自分の店を持ちたいと考えている。店舗営業の他キッチンカーなども考えており「かき氷は続けたい」と話す。暑い夏に人気のかき氷、「冬については……考えてないんですよね」と笑って打ち明けた。
十勝の食材を使ったちょっとぜいたくな一品を、日曜限定のお店で味わってみてはいかが?
<高山茉実(たかやま・まみ)>
1996年、日高管内日高町生まれ。愛知県内にある出版社を退職後、2020に音更町地域おこし協力隊就任。趣味は手芸とカメラ。最近カメラを新調したがあまり撮影できていない。21年5月から愛犬のコテツ(トイプードル、雌、8歳)と暮らす。
<かき氷と雑貨のお店 Pele(ペレ)>
音更町木野西通19ノ23 プルカ内
Tel:090・9436・4552
営:午前11時~午後4時、日曜のみ営業
駐車場あり