ぼくの新店めぐり~子どもに見せたいママの姿 ホットサンドとバナナジュースの店「リカフェ」
帯広市西3南20、イオン帯広店の駐車場に隣接する黄色い外観の建物。今年4月にオープンしたホットサンドとバナナジュースのテークアウト専門店「re.cafe(リカフェ)」だ。店を一人で切り盛りする古東利佳さん(33)は「ずっと自分の店を持ちたかった」と夢の実現に期待を膨らませる。
メニューはホットサンドとバナナジュース
ホットサンドは全6種。人気のBLT(ベーコン・レタス・トマト)は、それぞれ厚さ1センチほどある具材が魅力の一品。こんがり焼いたトーストのさくっとした歯触りの後、濃厚な半熟卵が口の中に広がる。肉厚のハムの味わいにトマトの酸味が調和し、しゃきしゃきとしたレタスがアクセントだ。
メニューごとに合わせてソースを変えており、素材のおいしさを引き立てる。ぴったりフィットした紙のシートで覆われているので、食べるときに手が汚れないのもうれしいポイント。「萌え断」と呼ばれる断面の美しさも重視した。
バナナジュースは牛乳を使った濃厚な「プレーン」と、あっさりとした飲み口が特徴の「豆乳」の2種。人気の「プレーン」は濃厚ながらなめらかな一品だ。バナナの甘みを冷たいミルクがすっきりと整え、味にしつこさがない。フレッシュなおいしさを楽しんでもらおうと、賞味期限は20分としている。
ヒマワリみたいに元気よく
店は実家の一室を古東さん自ら改装した。壁紙を張り替え、カウンターを設置。3坪ほどの店内は白を基調として、カウンター奥の壁は一面ヒマワリの柄にした。ヒマワリの花や「憧れ」「情熱」といった花言葉が好きだからだ。
店のロゴもヒマワリをモチーフにしている。太陽に向かって伸びるヒマワリは訪れる客を元気づけると思うから。「私はいつも元気だし、情熱は常に持ってるよ」とにやり。店には前の職場の同僚がよく顔を出し、悩みを話しに来ることもある。「おいしく食べて、笑顔になってくれたら」
re.cafeという店名には自らの名前と、「戻る、帰る」といった意味の「re」を掛け合わせている。「出会った人が味や自分のことを思い出してまた来てほしい」との思いを込めた。
ホットサンドに受けた衝撃
ホットサンドを店のメニューにしようと思ったのは昨年10月。古東さんは体調不良のため入院し、食事を取れない日々が続いた。入院明けの11月、子どもたちと胆振管内北湯沢へ出かけ、ロープウエーで有珠山へ登った。
有珠山にある「Cafe Mt.USU(カフェ・マウント・ウス)」で食べたホットサンドが衝撃だった。退院直後で食が進まなかったが、そのホットサンドは食べられたという。温かさとシンプルが故の素材のおいしさに感動し、涙がこぼれた。「このおいしさを伝えたい。絶対にホットサンドの店を出そう」と決意した。
自慢の味覚で独自のレシピ
決意してからの行動は早かった。東京や大阪を巡ってあらゆる人気店のホットサンドを食した。各店で使われている食材やソースの配合を推測してヒントを得ながら、オリジナルの商品の開発に取り組んだ。
「私、舌がものすごくいいんです」。市内に多数の飲食店を展開する会社に勤めていた古東さんの優れた味覚は、社内でも重宝されていたという。味見をするとどの調味料がどのくらい足りていないのか、何を入れたらどんな味になるのかなど直後に判断できた。自慢の舌を駆使して作っているからこそ、自信を持って提供できる品ばかりだ。
商品にはないが、得意料理はスープカレー。煮込んだ鶏ガラスープと8種のスパイスから作る本格的な一品だ。子どもたちが食べやすいようにと野菜は一口大に角切りしている。カレーの日はいつにもまして子どもたちの食いつきがいいと言う。「ごろっとした野菜じゃないから見栄えはいまいちなんだけど…」と苦笑した。
バナナは苦手でもジュースなら
ホットサンドを食べ歩く中で見つけたのが、もう一つの看板メニューであるバナナジュース。2021年は全国的なバナナジュースブームだったが、帯広にバナナジュースの専門店はなく、そこに目をつけた。
「バナナは好きじゃなかったんだよね」と笑う。バナナが苦手だったことから当初はバナナジュースが人気と知りつつも乗り気ではなかったが、大阪の人気店でバナナジュースを飲んで気持ちは変わった。「バナナジュースっておいしいんだ」
何店も回るうちにバナナジュースにも強い吸引力が必要なほど濃厚なものと、さらっとした口当たりのものがあると知った。ホットサンドと一緒に飲むことを考えたときに古東さんが選んだのは、さらっとした飲み口のバナナジュース。試行錯誤したのち、濃厚な味わいを残しつつホットサンドとの相性がいい独自のレシピを編み出した。
子どもたちに見せたいママの背中
店を開いた理由はもう一つ。「子どもたちに働くことの楽しさや生きることの素晴らしさを伝えたかった」。入院明けに「このまま死んでいたら、子どもたちの記憶の中に私はどう残っただろう」と考えた。
当時は勤めていたパン屋の仕事に集中しており、子どもと過ごす時間をおろそかにしていた。当時の仕事はやりがいもあり楽しかった。それでも忙しさを理由に家事をこなせていなかったため「子どもたちには働くことの大変さしか映っていないのでは」と感じたという。
店の営業時間は午前11時から午後4時。子どもが学校に行く姿を見送って、帰ってくるころには家で待つ。店は実家の一室を利用しているため、土日の営業中には子どもたちもよく顔を出し、母の姿を眺める。子どもと過ごす時間はかなり増えた。「学校でも話題になってるよと喜んでくれている」とにっこり。
店は期間限定?
店のある実家は、両親が将来的に取り壊す予定だという。何年先かは決まっていないが、営業はその時までの期間限定。業態を変えるかもしれないが、その後も何らかの形で店をやっていきたいと話している。
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<古東利佳(ことう・りか)>
1989年、帯広市生まれ。明星小、帯4中卒。得意料理はスープカレーで、鶏ガラを煮込み、焦げ目をつけた野菜を合わせた香ばしいスープが特徴。子どもが食べやすいよう、野菜は角切りにする。ご飯をがっつく人が好き。家庭での日々の食事は週2回作り置きする。
<re.cafe(リカフェ)>
帯広市西3南20
Tel:070・8493・6604
営:午前11時~午後4時
定:月曜、第4日曜
駐車場あり