【シニア】音を紡ぐ左手(3)「生き返るような喜び」
病院で最初に入れられたのは13階の大部屋だった。海の入江沿いの見晴らしの良い部屋だったが、冬のヘルシンキは一日中暗い。朝8時ごろには闇の中を出勤する車のライト、夕方4時すぎには帰宅を急ぐ車の光の列が見られた。
身体は動かず、口も利けず意識はもうろうとしていた。相変わらず、頭の中の壊れた蓄音機は回っていて、セヴラックの音楽を流し続けていた。同室の患者たちとの会話はなく、出される食事は流動食
身体は動かず、口も利けず意識はもうろうとしていた。相変わらず、頭の中の壊れた蓄音機は回っていて、セヴラックの音楽を流し続けていた。同室の患者たちとの会話はなく、出される食事は流動食
この記事は会員限定です。勝毎電子版に登録すると続きをお読みいただけます。
暮らしの情報
「Chai」以外でも暮らしに役立つ情報を、ニュースなどからピックアップ。