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きょうだい3人、主将やってます 野球に打ち込む斉藤家

村瀬 恵理子

十勝毎日新聞社 編集局メディアコンテンツ部

 帯広市内に住むきょうだい3人がそれぞれ所属する野球チームで主将を務めている。長男の斉藤新(あらた)さん=内野手、足寄高2年=、長女の陽(ひなた)さん=同、帯二中3年=、次男の奏(かなた)君=同、西小6年=はそれぞれ違った個性でチームを引っ張っている。特に陽さんは中学校では珍しい女子の主将だ。(村瀬恵理子)

長男の野球姿、妹と弟に影響
 父親の影響で幼い頃からプラスチックのバットやゴムボールで野球遊びをしていた新さんは、小学校に入ると少年団に加入。新さんの野球姿に憧れていた陽さんと奏君も自然と野球を始めた。

 新さんが主将を務める足寄高校野球部(部員23人)の池田剛基監督(38)は「練習態度や取り組む姿勢などを見ていて、早い段階から主将候補の1人だった。決め手は誰よりも楽しそうに野球をするところ」と語る。

秋季高校野球十勝支部予選の準決勝でマウンドに集まる足寄高ナイン。左から2番目が新さん(今年9月)



 全道初出場を目標に掲げるチームにとって、監督から新さんに求められるものは多い。ときには部員の嫌われ役を担うが、チームの勝利のため、その役割を理解する。「周りをうまく巻き込んで先頭に立ち、背中で引っ張るタイプの主将。後輩の面倒見も良いし、俯瞰(ふかん)した目を持っている」と池田監督。部員からの声を吸い上げ練習に取り入れるなどパイプ役もこなしている。

 「怒らない言い方を心がけている」と新さんは信条を語る。「ダメなところだけを指摘するのではなく、理由を説明し相手に理解してもらうようにしている。グラウンドに立てば一緒なので、上下関係の壁をつくらないように下級生ともコミュニケーションをしっかり取っている」と話す。

4番サードでチームを引っ張る新さん(今年9月)



 新さんの主将歴は小学5年生にさかのぼる。西フェニックス(現在はウエストマリナーズと合併)では6年生がいなかったこともあり、5年生のときに主将に抜てき。当時の監督、田沢和明さん(59)=現ウエストマリナーズコーチ=は「学年の中でも技術面で抜きん出ていて、礼儀もしっかり身についていた。長男気質でチームをまとめていた」と振り返る。

斎藤きょうだいをよく知るウエストマリナーズコーチの田沢和明さん(提供)



女子ながら少年団・部活動でも主将になった長女
 2歳下の陽さんも西フェニックスで6年生のときに田沢さんから主将に任命された。女子ながら5年生のときから4番で遊撃を守り、チームの中心的選手だった。田沢さんは「3人の中で一番芯が強いのでは」とし、「6年生の大会でチャンスで打てず、第3打席目でやっとヒットが出てベース上で涙を見せたことがあった。怒られても泣くことは一度もなかったが、主将として結果を出せないもどかしさや悔しさが強かったのでは」と思い出を語った。

 帯二中でも野球部に入り、3年生を含め男子9人、女子2人の中で陽さんが2年生の新チームから主将になった。野球部顧問の吉能康大(よしの・こうだい)教諭(38)は「私の知る限り、女子で主将を務めたのは陽が初めてで、十勝の野球部でも初だと思う」とし、「陽を主将にすることは一択だった。甘えがなく、自分にできることをひたむきに積み重ねる。そういった姿を部員たちに見せ、チームを引っ張っていた」と話した。

 陽さんは劣勢の時でも笑顔を絶やさず、最後まで絶対にあきらめない。それがチームの支えになり、全十勝中体連春季大会では緑園中と合同チームで出場し、準優勝を収めた。

 2021年に発足した中学女子軟式野球チーム「グラティアスウイッシュベースボールクラブ」でも今年4月から主将を担っている。

 陽さんが意識しているのは「メリハリ」。練習中や試合のイニング交代時など、全力疾走やきびきびした行動を日頃からチームメートに浸透させている。「怒るときは怒るけど、その後のフォローも心がけている」と笑顔を見せた。

グラティアスウイッシュBCでも持ち前の明るさと笑顔でチームを盛り上げる。左が陽さん(今年6月)



主将を経験して成長した次男
 きょうだいの中で随一の身体能力を持つ奏君だが、「主将にするにはリスクがあった」と田沢さんは話す。気分が乗ると良いが、打たれ弱いところがあったからだ。しかし主将としてチームをどう勝利に導くかを考え、勝つために「つなぐ野球」を徹底した。

誰よりも声を出しチームの軸となる奏君(今年7月)



 「周りをよく見られるようになった。監督に言われる前に選手に指示を出し、チームを回している。みんなが頼りにしている」と田沢さんは成長に目を見張る。奏君は「チームは家族」とはにかんだ。

 今年7月に開催された全道少年野球十勝支部予選でウエストマリナーズ(団員数14人)は優勝し、全道大会出場を果たした。学童都市対抗戦の「帯広選抜」の選手にも選ばれ、今月の全国大会への出場を決めた。

 子どもたちが全員、主将をしていることを母知美さん(38)は「たまたまです」と笑うが、「父親がよく『エースナンバーよりキャプテンナンバーを目指せ』と子どもたちに話していた」と言う。「主将はチームのまとめ役としてうまくいかないことが多いし、自分のことより周りのことが優先になる。人として成長できるという考えなのかな」と想像する。実際に、新さんは小・中・高と全ての野球チームで主将を務め、その背中を妹、弟が追っている。

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子育て信条「自分のことは自分でやる」
 知美さんの子育ての信条は「自分のことは自分でやる」。子どもたちは小学校に入学すると、自分で朝ご飯を準備し食べている。「朝ご飯に自分の食べたいものを食べるのがモチベーションになるし、作る時間を考えて早起きもできるようになった。私が面倒くさがりなだけだけど」と笑うが、子どもたちは日々の生活から自主性を身につけた。

 知美さんは高校時代、白樺学園でスピードスケートに打ち込んだ。副主将で部をまとめるなど「母親の遺伝子」が脈々と受け継がれているのかもしれない。「ハッパを掛けることがあるけど強制はしない。それは自分で決める力をつけさせたいから」

末っ子の三男、将来の主将かも?
 斉藤きょうだいには、実は4人目もいる。一番下の昊(そらた)君=西小2年=もウエストマリナーズに所属し、5年生以下チームで2年生ながら三塁手を守る。愛くるしい見た目だが、身長137センチ、体重53キロの恵まれた体格から外野にも飛ばせるパワーヒッターだ。兄2人と姉から自然と学んだ「主将気質」を受け継ぎ、将来どこかのチームで主将をしているかもしれない―。

小学2年生とは思えないスイングをみせる昊君。今後の成長が楽しみ(今年10月)

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