日本から直線距離で約1万4000キロメートル離れた南極大陸から西に4キロメートルほど離れた南極圏にある東オングル島。南緯69度00分22秒、東経39度35分24秒。基地の名称は建設された元号にちなんでいる。
1957年1月29日に第1次南極地域観測隊の永田武隊長ら53人が南極圏にある東オングル島に到着し、昭和基地と命名。同年2月14日に越冬隊が成立している。当初は数棟しかなかった観測施設は現在、大小現在68棟の建物の他に貯油タンク、貯水タンク、通信用アンテナを設営している。
南極地域観測隊は約60人規模で、このうち30人ほどが昭和基地で越冬する。ちなみに2015年3月の第56次南極地域観測隊までに、同行者も含めて延べ3157人が昭和基地を訪れている。
食材は日本やオーストラリアで購入し運び込む。観測隊員の中に調理師がおり、バランスが良く、飽きない献立を工夫して提供している。ラーメン、カレーなども楽しめるほか、周辺の海氷に穴を開けて釣った魚が食卓に並ぶこともある。また、持ち込んだ酒を飲むこともできる。但し、生野菜はすぐに無くなってしまうため、昭和基地内に水耕栽培装置を設置し、レタスなどの葉物野菜を栽培している。
昭和基地内には水洗式トイレが設置されている。汚水は処理槽で浄化した後に海洋投棄。汚物はバイオテクノロジーで分解し、水分を減らして焼却し、集積した灰は日本に持ち帰って廃棄物処理している。野外での大小便は禁止されており、やむを得ない場合は携行トイレを使って、昭和基地に持ち帰って処理する。
昭和基地は、南極大陸から離れているために南極圏の中では比較的温暖で風は強くない。平均気温は冬にあたる8月でマイナス20度程度、夏場の1月で0度程度になっている。基地内は温水による床暖房が設置されており、風呂もある。ディーゼルエンジン発電機を常用発電装置としており、余熱は有効利用されている。
気象や電離層など長期間に渡って継続的に行われる『定常観測』と、スポット的に行われる『研究観測』があり、オーロラの観測などが『研究観測』に当たる。南極地域には地球環境変動を把握するために必要なセンサーの役割があり、継続的な観測が重要とされる。