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動物園のあるまちプロジェクト

Vol.2

動物園の未来予想図

TOPICS 01国内動物園などの飼育頭数

 全国の動物園が頭を悩ませる動物の高齢化。日本動物園水族館協会(JAZA)の推計によると、2010年から20年間で全国の動物園のアフリカゾウは約85%減少し、7頭にまで落ち込むと予測されている。これはほんの一例で、今後20年間でさまざまな動物が姿を減らし、アフリカゾウやアミメキリンなど人気動物が、近くの動物園で気軽に見られる存在ではなくなるかもしれない。

 ワシントン条約により野生動物の導入は難しく、動物の購入価格も高騰している。また、動物園に繁殖に可能なスペースが設けられていないこともあり、そもそも多頭飼いが難しい現状も少なくない。もちろん動物同士の相性もある。こうした課題をクリアして赤ちゃんが誕生したとしても、親がちゃんと育てられるのか、その子どもが大きくなり親になったとき、同様に子育てできるのか―。繁殖への道のりは長く、難しい。

TOPICS 02おびひろ動物園の飼育動物の年齢と平均寿命

 道内唯一のゾウ「ナナ」をはじめ、おびひろ動物園には多くの”ご長寿”動物がいる。コンドルのジャックとジェーンは、国内最高齢の老夫婦だ。昨年は、当時国内2番目に高齢だったカバ「ダイ」が死んだ。限りある動物の命をどう未来につなげていくのか―。

 動物にとって、年を重ねることは避けられない。病気予防と早期発見に向け、採血や体重測定などを動物にストレスを与えず行えるよう指導する「ハズバンダリートレーニング」に力を入れ始めた動物園も多く、おびひろ動物園もエゾシカなどで行っている。
 高齢化をマイナスのみに捉えず、命について考える教育的な価値もある。しっかり動物の今を知り、発信することが大切になる。

TOPICS 03おびひろ動物園の個体数の推移

 かつておびひろ動物園には、ラクダやワオキツネザルなども飼育されていたが、少子高齢化の影響などから姿を消した。1985年から2015年の30年間で、個体数は半減。空になった獣舎もあちこちに見受けられるようになった。

 現在、おびひろ動物園には67種337個体(3月末現在)が暮らしており、1985年の77種706個体と比べると、その数だけでなく種も減少している。種を保存し、維持していくために、30年ほど前から全国の動物園間では、繁殖を目的に動物を貸し借りする「ブリーディングローン」が盛んになった。1月に誕生したチンパンジー「ピナ」の母親「プヨ」も、2005年に旭山動物園から来た個体だ。全国の動物園が手と手をつなぎ、動物の種の存続へ向けて取り組んでいる。繁殖の研究がまだ進んでいない動物もいるが、研究によって野生動物の繁殖にも役立つことも期待される。

TOPICS 04全国と道内4園の入園者数の推移

 おびひろ動物園の入園者数のピークは1973年の24万8千人。その後、徐々に下降線をたどり、1997年には11万5千人まで落ち込んだ。近年は回復傾向にあり、20万人の大台も近付いている。

 おびひろ動物園の入園者数は1990年代後半には11万人台に低迷したが、その後、冬季開園や小・中学生の入園料無料化、年間パスポートの導入などさまざまな努力が実り、2014年度、26年ぶりに19万人台に回復した。低迷の背景にはレジャーの多様化などがある。人気動物が来ても、その効果は一過性がほとんど。必ずしも来園者数だけが動物園の価値判断になるわけではないが、動物園が市民の憩いの場で在り続けるために、足を運びたくなるような動物園にしていきたい。

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