CFで修理、運航再開 然別湖遊覧船「いさを号」
【鹿追】冬の間に船底が壊れた鹿追町然別湖の観光遊覧船「いさを号」が、修理を終えて今季の運航を再開している。修理資金はクラウドファンディング(CF)で募り、目標の200万円を大幅に上回る331万5600円が集まった。資金提供者からは「遊覧船上で結婚式をした思い出の遊覧船」「新婚旅行で乗船した」などのメッセージが寄せられていて、乗船客の思いがこもった遊覧船修理になった。
然別湖の遊覧船は、然別湖畔温泉ホテル風水が運航。夏季の運航を終えると秋に陸揚げして保管している。6月上旬に今季の準備を始めたところ、2隻ある遊覧船のうち、いさを号の船底に破損が見つかった。同号はFRP(繊維強化プラスチック)製で1991年に製造され、定員は60人。同ホテル営業次長の水間幸市さん(40)は「雪などで船底の一部に重さが集中して船底が割れた可能性がある」と話す。
もう1隻の遊覧船「第一いさを号」は定員40人で、コロナ後の観光需要を見据えると2隻体制が望ましい。ただ、観光業はコロナ禍で大打撃を受け「修理費用を捻出しようとしたが厳しい状況」と水間さん。インターネット上で企画を提案し、賛同者から資金を集めるCFを使った。
7月9日~8月20日の期間で資金募集したところ、8月10日に目標金額の200万円を突破した。直接の支援も含め210人から資金が集まった。
修理作業は、募集終了前の7月下旬から造船業者が行った。8月5日に終えて、国交省の検査も合格し運航を再開した。目標以上の資金が集まったため、桟橋まで車いすで下りるための可搬式スロープの購入、感染予防対策備品、破損していた乗客シートの交換にも充てた。
なぎの然別湖は星が湖面に映り、「星の棲(す)む湖」とも言われる。同ホテル宿泊者限定のナイトクルーズでは、船尾にオープンデッキを持ついさを号が湖の良さをより実感できるという。
同ホテルは63年に遊覧船事業を始め、2年後に“還暦”を迎える。水間さんは「『CFをきっかけに再訪する』とメッセージを寄せてくれたことがうれしい。然別湖や遊覧船にはたくさんの人の思い出が詰まっていることを再認識した」と話していた。
(平田幸嗣)